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『スタジオ える あっと ブログ』 略して 『鼻眼鏡』!(ええええ?)
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第五話 『記憶と経験』
「先に行け!」

 確かに隊長がそう叫ぶのを聞いたが、ユリウスは動けずにいた。あんなに焦った隊長は見た事がなかった。

「何をしている!早く姫を連れて行け!!」

 やっとユリウスは姫の存在を思い出した。隊長を心配そうに見つめる横顔が色白くなっていた。
 そうだ、彼女を絶対守り通さなければなければならないのだ。
 ユリウスは彼女の手をしっかりとつかむと、そのまま走りだした。









 彼の言葉通り、エイレがアパートを受け渡した後、アレックスは迎えに来てくれた。迎えに来ると言っても、彼は日本で車を所有していないからタクシーを呼んで来てくれたのだが。
 重いはずのスーツケースを軽々と持ち上げるアレックスの様には、エイレは感心する他なかった。そして飛行場までの区間、彼はスタッフやマネージャーに彼女は「ドイツの学生時代の友人」であると説明したと話した。
「交換留学で知り合って、久しぶりに会ったって言っておいた。一緒にアメリカに行く理由は、エイレが就職を見つけるのを手伝うためと、住まいを見つけるまで俺のアパートを借りる為だとも」
 ちょっと強引な気もしなくはないが、あり得ない話ではないので了承した。遠い親戚であると説明されるよりは遙かにマシである。
 万が一のため彼の学校名とその地域の事を少し説明してもらったが、余程の事がない限りボロは出そうにない。
「嘘だとバレたら、出会い系サイトで知り合ったと言えば良いしね」
 そう冗談めかすエイレに、アレックスは複雑な表情をした。
 その表情の意味を問いただす前に、2人は空港に着いてしまった。

 2人の心配をよそに、エイレは「ドイツに在住していた時」の事は聞かれなかった。その代り、アレックスの色沙汰について問われた。どうも彼は、女性との色沙汰が全く上がらないので、密かに同性愛者ではないかと思われているようであった。
 一瞬、それについてアレックスに質問してみようかと思ったが、別に彼がどんな人を好むのかを知っても関係ないなと思いなおした。母が生前、人の性癖に難癖をつけるなと教えられていたのを思い出したのだ。
 そうして、彼らはアメリカへ出発した。



 のだが……



「気持ち悪い…」
「水、買ってこようか?」
 ロサンゼルスまで10時間強、揺れもなくゆっくりと休める空の旅だと思ったのに、最後の30分で眠気も一気に覚める程の乱気流に入ってしまったのだ。エイレも決して乗り物酔いにかかる人ではなかったが、朝食をちょうど食べ終わったところだったので、胃の中がミキサー状態なのだ。
 実際、彼女以外にも顔色の悪い人はたくさんいた。しかし、さすがと言うべきか、アレックスはけろっとしている。
 こんな状態では有り難い事だが、同時に少し恨めしかったりする。
 でも、そんな事は一言も漏らさずに、エイレは「お願い」と水を頼んだ。
 アレックスが行ってしまうと、エイレは出入りする人の波を眺めた。そしてふと、この中に他の皆がいるのかもしれないと思った。しかし、これは自ら否定する。もし、他の誰かがいたら、アレックスは分る筈なのだ。
 その中、黒髪の男が通り過ぎた。






リアンダー!


マティアス…!



 ユリウスを追いやり、リアンダーは目の前の男を睨んだ。
 その漆黒の髪と金色の瞳、そして何より『赤獅子』の対である事から『黒豹』と呼ばれているマティアス。
 勝敗は五分五分、だが今回は絶対に負けられないのだ。リアンダーは気を引き締める。
「やっと、決着がつけられるな」
 マティアスは嬉しそうに言った。
 気持ちは分かったが、リアンダーは答えなかった。昔なら、今の隊長という立場じゃなかったら、彼も決着がつけられる事に気持ちが昂っただろう。勝敗など関係なく、決着をつけられた事で満足できる。
 しかし、今ではそうはいかない。リアンダーは、必ず生き残らなければならないのだ。姫の命、そして笑顔を守り、リアンダーが彼女の幸せを見届けるまで決して死ねないのだ。

 ライバルの様子がいつもと違うと気付くマティアス。訝しむが、それでも剣を構えなおす『黒豹』。そして同じように『赤獅子』も構える。

 その場で停止していたのは、ほんのわずか数秒だったのだが、永遠に感じられた。

 合図は何だったのか、2人は一斉に踏み込んだ!

 鉄と鉄のぶつかる音、そしてその後に続く衝撃。一撃一撃が重く、震動が腕から全身に伝わる。
 『赤獅子』と『黒豹』の額には汗が浮かんでいる。お互いに相手の癖を知り尽くしているせいで攻撃が入らないのだ。でも、賭けに出ようとするものなら相打ちになる可能性の方がでかい。
 そんなジレンマを抱えながら、2撃、3撃と攻防は続いた。

 しかし、終わりは唐突におとずれた。

 カキィン!と、2人の剣が根元から折れた。
 そして、「しまった」と思う間もなく『赤獅子』が『黒豹』の腕を掴んでは、剣の束の部分で『黒豹』の頭部に重い一撃を喰らわせた。
 脳震盪を起こしても不思議ではないのに、『赤獅子』は最後のだめ押しとでもいう様に『黒豹』の胸倉を掴み壁に叩きつけた!
 さすがにこれでは『黒豹』も太刀打ちが出来なく、マティアスは床に崩れた。

「すまんな、マティアス」苦しげにリアンダーは言った。「この戦いはフェアーじゃなかった」

 そして振り返ることもなく、リアンダーはユリウス達の後を追った。






 思わず振り返るエイレ。しかし、男はいなかった。
 そして、息を止めていた事に気づき、同時に震えが出てきた。
 リアンダーの経験した事をエイレはすべて知っている。しかし、彼女の体はあの戦場の臭い、人の叫び、そして重く圧し掛かるプレッシャーを味わった事がない。
 味わった事もなく、慣れてもいないので、彼女はその記憶に『恐怖』を感じていた。

 だめだ、震えるなワタシ!隊長であるのなら、皆を引っ張らなければならないのだ!ワタシがこんなのでどうするんだ!

「大丈夫か」
 いきなりアレックスの声が聞こえ、一気に現実に連れ戻される。
「さっきよりも顔色が悪いんだが…疲れたのか?」
「…うん、一気に疲れちゃったみたい」
 ぎこちない笑顔を見せるが、今ならそれは気分が悪いのと疲れのせいに出来る。


 アレックスに要らぬ不安をかけないように、エイレは隊長として初めてのウソをついた。




↓あとがき



ニョホホホホ~、第5話だよん!

ええ、姫を守っているのだから、やっぱ敵もいるんですよね。今回は隊長のライバル出現?!って感じですかね?
(誰に聞いてる)
上では一応勝っているんですが、隊長が「フェアーじゃない」と言った理由は彼らの心境を比較したからです。自分のために戦うマティアスと姫の為に戦うリアンダー。
まぁ、実際はフェアーな戦いだったんですが、それは隊長の気持ちの問題ってことで(笑)


では、恒例の人物紹介!
今回はリアンダーの好敵手、『黒豹』マティアス!
Matthias

名前: マティアス
年齢: 34
髪の色: 漆黒
目の色: 金色
身長: 180+
二つ名: 『黒豹』


いつもとは違い、今回は転生前から紹介します。
実際、マティアスは転生後↑の姿であるとは言い切れませんからね(リアンダー→エイレやユリウス→アレックスなど)。今はどんな姿でしょう?

では、次回をお楽しみに!!
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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