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『スタジオ える あっと ブログ』 略して 『鼻眼鏡』!(ええええ?)
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第四〇話 『デート』
 扉が開き、そして閉まる音と共にスチュワートを呼ぶ声がした。その声に聞きおぼえがあり、エイレは与えられた部屋からエントランスまで早足で向かった。
 階段の踊り場に着くと、思っていた通りの人が何やらスチュワートと話していた。本来なら話し終えるまで待つのだが、久し振りに会えたのがとても嬉しくてエイレは思わずその人の名を呼んだ。気付いた相手もエイレを見た瞬間顔を綻ばせた。
「エイレ?リチャードったら、あなたが来るのを黙っていたのね。あなたも人が悪いわねスチュワート!こういう事を黙っているなんて」
「貴女を吃驚させたがっていたのですよ、フェリシティ夫人」
 そんな二人のやり取りを気にせず、エイレはフェリシティに抱きついた。
 エイレの母親、巴と違って、フェリシティはふくよかな女性だ。そして何故か常にクッキーの匂いがする。だからか、彼女に抱きしめ返されると、母親とは違った安心感を幼い頃から得られていたのだ。人から話を聞くと、ぐずりだした赤ん坊エイレを宥めるにはフェリシティに抱きかかえてもらうのが一番だったらしい。
「ちょっと顔を見せて…もう一年になるのね~」エイレの顔を撫でながらフェリシティは言った。「ちょっと痩せたんじゃない?」
「どうだろう…?」と肩をすくめるエイレ。
 しばらく懐かしむように見つめあっていたが、突然フェリシティがいけないと声をあげた。
「リチャードったら勝手にレストランに予約をいれてたのよ!着替えたいと私が先に戻ってきたんだけど…そっか、エイレの為に予約しておいていたのね、あの人は……まったく」
 怒っている口調ではあるが、彼女の表情は笑っているままだ。こういう寛容なところがリチャードとの結婚生活を円満にしているのだと、エイレは考えている。
「と、なると」エイレを見ながら彼女は言う。「あなたにドレスが必要になるはね」
 ワンテンポ遅れてからエイレは今何を言われたのかを聞き返した。
「ヘンリーの事さえなけりゃ、一緒に買い物に行けたのに!本当、迷惑の塊だわあの人は、例え義理の兄でも!
 だから悪いけど、今回は私のお古を貸すけど今度一緒に似合うドレスを探しに行きましょうね?私たちからのプレゼントで」
「そんな、悪いです!出来ません!」
 ドレスとはいわないものの正装が必用なレストランに着ていける服ぐらいは持っているとか、フェリシティのお古はいただけないとか、いやだというのではなく自分にはもったいないのだとか、プレゼントとしてドレスを買ってもらえないとか、いろいろと言ってみたもののフェリシティもスチュワートも聞く耳持たぬとエイレを主寝室の方へ向かわせた。



 着せ替え人形の如くいろんなドレスを着ては脱いだりを繰り返したのち、やっと青いサテン生地のドレスに落ち着いた。フェリシティのお古といっても保存状態が良かったから着る分には申し分ないのだが、いかんせん時代が現れてしまう。派手な装飾がつけばつくほど、そのドレスが40年ほど前のファッションのものだとわかってしまう。なので、やっと落ち着いたのが肩のでているシンプルなスレンダーラインのドレスだ。
 ドレスを着なれていないのに、自分に合ったサイズがなかったのでちょっと大きめのヒールまで履かせられ、エイレは車の中そわそわしっぱなしだった。フェリシティが着替えている合間に違和感がないかとスチュワートに聞いたのだが、とても綺麗だと褒められさらに落ち着かなくなった。
 だが、それより何よりも、リチャードに会うことに一番緊張しているのかもしれない。名付け親とはいえ、エイレにしてみれば彼は一番『父親』というものに近いからだろうか。


 レストラン自体は本物の城だった。あちこち少し手入れをしているだけで、ほとんどは昔のままだから、まるでタイムスリップをした気分になってしまう。しかも、受付やウエーターの制服、テーブルの整え方、一面のデコレーションを見る限り、入口に『一般の方お断り』と書かれてあっても文句が言えないなと思ってしまう。
 前、日本の旅番組でこのレストランの事を紹介していたような気がするが、確かその時予約しても1年半待ちだとかを聞いたような…
 余りにも普段の自分とは程遠い世界で、思わずあれこれを眺めていると優しく名前を呼ばれた。呼んだフェリシティに意識を向けると、彼女はエイレの腕をとりほほ笑んでくれた。いきなりどうしたのだろうととりあえず微笑み返すが、視線を前に戻すとエイレは軽く緊張してしまった。
 もう何度もあっているのに、何年も知り合っているのに、これだけは治らないのかもしれない。小さい子供が親に気に入られたいのと同じ気持ちなのかなとエイレは自己分析をしてみたが、比べられる対象がないので何とも言えないままだった。
 誰かと談笑していたリチャードも直ぐエイレたちに気が付き、シワだらけの顔を綻ばせて席から立った。齢60年以上ではあるものの、リチャードは背が高く、アレックスと引けを取らないのではとエイレは思った。髪の毛こそほとんど白く染まっているが、しっかりした足取りや身のこなしを見ているとまだ50代だと言われても納得してしまう程、活力にあふれている男性である。
「エイレ」と愛情にあふれた声で呼ばれ、しっかりと抱きしめられた。
「元気そうで良かった…私たち皆とても心配していたんだ」
 ゆるりと腕を解いてから彼はエイレの手をとり、しばらく眺めていたら突然「とても素敵だ」と賛美された。
「しかし、青は君の色じゃないな。もっと似合う色を探さないとなフェリシティ」
「まぁ」とフェリシティは口をとがらせた「服を買う余裕もくれなかったくせにずいぶんな言い草ね!」
 酷いわよね~、とエイレに賛成を求めるが、エイレは苦笑を浮かべるのに精いっぱいだった。
 話題を自分から変えようと、ここのレストランって予約が大変じゃないとエイレは聞いてみた。
「ここの支配人と顔見知り、とか?」
 リチャードくらいの位の人ならおかしくはないと思っての発言だが、驚くことに彼は違うとその可能性を否定した。
「私が、ではなく彼が支配人と交友があってね。そう言えば自己紹介をしていなかったな、私も礼儀知らずだ」
 そう言って先程まで談笑していた相手が一歩前に出てきた。
「彼はピエール・ボールガール、彼が某会社の社長を務めていた時に取引をしたことがあってね、ここも彼が教えてくれたのだよ」
 リチャードの言い分を聞き終えてから、エイレは初めて相手の顔を見た。
 ハシバミの髪を軽く後ろに流した下には、左目に泣き黒子をこしらえた甘いマスクの男性がいた。名前で予想はついたものの、高い鼻が彼をフランス人だと物語っていた。
 ピエールはフェリシティに軽く会釈をしてからエイレの左手を取り、視線を外さないまま軽く手の甲に唇を落とした。
 顔に血が昇るのを、エイレは実感せずにはいあれなかった。











<ただいま執筆中、もう少々お待ちください>





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2010/01/18(月) 13:09:35 | | #[ 編集]
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2010/02/08(月) 20:37:18 | | #[ 編集]
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2012/11/01(木) 17:56:16 | | #[ 編集]
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