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『スタジオ える あっと ブログ』 略して 『鼻眼鏡』!(ええええ?)
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第三五話 『笑顔』
 ラモンの住処を一目見たニーシャが思った事は、ボロ屋。
 3階建ての茶色い、レンガのようなアパートだが、茶色いのは元々そういう色だったからなのか長年の汚れでそうなったのか。いかにも治安が悪そうな場所に特に目立たないアパートにラモンが住んでいるのは、彼の『仕事』のせいなのか、それとも純粋にこの国の経済力の表れなのか?
 両方だろうな、とニーシャは思った。
「ねぇ…車をこんなところに駐車しておいても大丈夫なの?」
 怯えた声でデイビットが聞いた。
 背は高くなったもの、怖がりなのはサンディの頃から変わってないようだとニーシャは秘かに笑った。
「まだ日が出ているうちは安全な方だ。まぁ、あまり長く放置しておくのは賢明じゃないな……ここらへんで車に乗ること自体あまり賢明じゃないけどな」
「え、なんで?」
「車、しかもレンタルとはいえ状態の良い車に乗ってる奴と言えば金持ってる証拠だろ?信号待ちとかでそういう奴らは狙われやすいんだな、これが」
 あきらかにからかい口調のラモンに、デイビットは感心するくらい反応し、自分の頭2つ分も小さいニーシャの背中にはりついた。これには流石のニーシャも呆れた。


 アパートの外壁も酷かったが、内装はそれ以上だった。
 まず、臭いが酷い。ロビーの隅には何の物だが分からないが、動物の死体が腐っていた。それに人間の排泄物の臭いが混じり、鼻が曲がるというよりも純粋に気分が悪くなった。ニーシャも治安の悪い所で住んでいたのだが、アメリカとグアテマラだとその度合いが全く違う事を確認させられた。
 壁は勿論、天井にもひびが入っているうえ、上で人が歩くとその道筋にそってパラパラとチリが降ってくる。
「あ、そこに立つなよ?」とラモンが注意してきた。「床が濡れてるだろ?水漏れしてるんだ…誰かがトイレを使う度にな」
 ニーシャの肩をつかむデイビットの手に力が入った。


 ラモンの部屋は2階にあり、窓もあったがそこから見えるのは隣のビルの壁だけ。むしろ窓を開ければ触れるほど近かった。
 部屋自体はそれなりにキレイにされていて、必需品はすぐ集められるからと言ってラモンはテキパキと動き始めた。ラモンの部屋にたどり着くまでが恐怖の連続だったのに、着いた瞬間安心したのかデイビットが手伝うよと申し出た。
 たいして重い物はないだろうが、力仕事は彼らに任せてニーシャはラモンの所持品を眺めた。家具はシンプルで安っぽく、ベッドのシーツなんかは、洗ってはいるが、買い換えてはないだろう。でも、全体的に清潔感はあった。こんな場所でも心地よく住めるようにしている努力は感じられた。
 ふと、本棚に目が移った。
 ラモンが『本読み』だとは思っていなかったので本棚があるのは意外だったが、よく見たら本が一冊もない。名前のないファイルが多く、プライベート品を見る事に心の中でラモンに謝罪しながらニーシャは一冊手に取った。
 新聞の切り抜き。盗撮されたとしか思えない写真。そしてニーシャでは読めない字で書かれたメモ。他のページを見ても同じ風に整頓されていて、他のファイルも同じなのか思わず手を出すニーシャ。
 「そう言えば、彼はギャング内ではスパイまがいな仕事してたと言ってたわよね…」と4冊目のファイルを手に取りながらニーシャは一人ごちた。
 ページを開くと、ひらひらと写真が数枚床に落ちた。慌てて拾うと、町はずれで日向ぼっこしている犬が写っていた。明らかにこれまでのファイルとは違う写真に、ニーシャは驚きを隠せないままページをめくった。
 老人たちがボードゲームを楽しんでいる写真。商店街で野菜を買っている中年女性達の写真。ひっそりと道端に咲く名も無き花の写真。そしてそれぞれの横には手書きで日付ともうひと文書かれていた。筆跡を見ると、他のファイルのメモ書きと似ていた。
 一通り写真をすべて見てからファイルを戻そうとすると、他のファイルの下に隠れるようにして写真が一つ裏になっていた。
 ここまで来るとプライバシーなんて構っていられないとニーシャは開き直って、写真を引き抜いた。そして写真を裏返すと、見た事がある女性が写っていた。口を開いた大きな笑顔で、ラフな格好を形ばかり隠そうとしている写真。
 これまでの中で一番プライベートで、一番親密な写真。ラモンの元恋人、デローリスの写真。そうではないかと疑っていたが、これでやっとこれらすべての写真はラモンが撮ったのだと確信した。
 振り返ると、ラモンの準備はほとんど整っていた。いらないものすべて捨ててしまうだろう。本棚には寄りつかないようだからここにあるもの全てはゴミになる運命。
「……これを私が預かってても文句ないわよね?」
 そう言って、ニーシャはその笑顔の写真をこっそりと他の写真が入っているファイルに入れ、それごと2人の元に近寄った。


 これだけ写真を撮っているんだ、ラモンが愛用しているカメラがあるはずだ。もしそれが必需品の中に入ってなかったら、ニーシャは強引にでもそれを一緒に持って行くように説得させようと決心した。













 嗚咽もおさまり、エイレから時々聞こえてくるのはしゃっくり似た息の吸い込み。背に回された手は未だに離れようとはしておらず、アレックスも異存がないのでエイレを抱きしめ続けた。



 不思議な感覚だ。



 今、腕の中で泣きやんでいるのはミサキエイレという名の女性だって事を知っているし、昔は父のように慕っていた隊長『赤獅子』リアンダーだって事も分かっている。どちらも尊敬し、どちらも愛している。
 だが、彼らは別々の人間なんだ。
 リアンダーの記憶を受け継いでいても、エイレは彼にはなれない。それはエイレに限ったことではなく他の皆、ニーシャもデイビットもラモンも、それにアレックスにも言える事だ。
 20年以上も今の姿で人生を歩んできたのに、いきなり蘇った記憶だけで昔どおりに振る舞えは出来ないし、そう強制させるのも酷な話だ。
 だから、アレックスはエイレへの気持ちを自覚しても、それはおかしいと葛藤などしなかった。昔は昔、今は今、2人が出会えたのはその記憶のおかげだが、それはきっかけにしか過ぎない。アレックスが好きになったのは、前向きで、優しくて、誰かの為に料理を作るのが楽しくて仕方がない、笑顔の似合う女性なのだ。
 だからここで彼女がすべてを忘れたいと彼に救いを求めたら、アレックスはそのまま彼女を連れて逃げてしまってもいいと思っている。
 しかし、エイレは絶対にそんな事を言わないのは分かり切っている事で、途中で逃げ出すなんて彼女ではありえないのだ。


「アレックス…」エイレが彼の肩に顔を埋めながら呼んだ。「1つ、言っても良い?」
 何も言わずアレックスはゆっくりと腕を解き、安心させるように顔を覗き込んだ。目は涙で赤くなっていたが、表情はいくらか柔らかくなっていた。
「私は、リアンダーのように体力的にも精神的にも強くない…
 それでも皆の事を思うと弱くなんていられない。隊長は皆のまとめ役、私が崩れたらこの親衛隊自体が崩れてしまう。そうならない為にも、アレックス、あなたを頼ってしまうかもしれない…」
 エイレの目から、静かに、一粒の涙が流れ落ちた。
「でも私は、王女…ダーシャがちゃんと幸せになってくれるのを見届けたい!」
 親指で彼女の涙払いながら、アレックスは自分が今何をすべきか良く分かった。
 自分の気持ちは今、伝えるべき時ではない。エイレを含め、他の皆はアレックスのように割り切れていない。今のエイレの願いだって、エイレ一個人としての願いではなく、隊長からの頼みだった。


 でも、これだけは言っておきたかった。


「……俺は、ユリウスは隊長の頼りになりたくてずっと頑張ってた。それでも隊長は常にユリウスの前を歩いていた、だから追いつくので精一杯だった。
 そして、その気持ちは今でも変わらないんだ!」

 だから、頼ってくれエイレ

 最後のは心の中で呟いた。
 それでも気持ちが伝わったのか、エイレはありがとうと言い、初めて会った時の笑顔を見せてくれた。


 一人じゃないと分かった時の、安心した時のあの笑顔をもう一度眺め、今度はアレックスが涙するところだった。





↓あとがき



時間がかかったな第三五話!

(本当にな?)


いやぁ~もう、前回の更新から約3ヶ月ぶりだよ(汗)

しかも進展ないし!!


しかしまぁ、これでグアテマラ編はやっと終わりました!!
パフパフパフ~♪
やっと中南米から出れますよ(長かったぁ~)
今度は世界のどこに行くんでしょうか!良い子の皆はわっかるっかなぁ~?

(分かるかぁー!!)

でも、キリが良いし35話と結構長くなっているので、来週は『バル側』これまでのダイジェスト版をお送りしたいと思います!


では、人によっては来週再来週に会いましょう!(笑)

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コメント
この記事へのコメント
わーい♪
やっと続きが読めた~(^-^)
ダイジェストも楽しみにしてます♪
2009/02/03(火) 06:36:21 | URL | うだジロー #-[ 編集]
今回も感動しました(;_;)
キャラクターにリアリティーがありますよね~
 
私個人としては結構、ラモンに感情移入…
人間くさいところがなんともいえねーZE(笑)
…すれ違いとかタイミングの悪さって
諦めない限りなんとかなるのかな…
オラ、せつねーだ。。。
2009/02/03(火) 08:19:45 | URL | はなえ #FSX/Slr.[ 編集]
お返事まとめ♪
>うだジローさん
長らくお待たせしました!
グアテマラ編が終わったので、次はヨーロッパあたりに行こうと思ってます♪

今はダイジェストをどう書こうか検討中です(苦笑)
あ、それと『バル側』専用のホームページを作りたい!

……時間あるかな(汗)





>はなえさん
最高の褒め言葉、ありがとうございます!
ってか、褒めすぎですぅ~、はずかちっ!!

ラモンはですね、書いていくうちに初期設定とかなり違ってきちゃいましたね~。
最初はもっとチンピラっぽかったんですよ?しかもデローリスは存在すらしなかったんですよ?!
いやぁ~、物語って成長するもんなんですね(シミジミ)

ちなみに、今度の日曜日はデローリスの全身像をアップしたいと思います!
(思ったよりも大役のキャラになったので、描いてあげるべきだと思ったので(苦笑))
2009/02/04(水) 10:03:00 | URL | EL #QsqJ.6N.[ 編集]
>『バル側』専用のホームページを作りたい!

別ブログでどうすかね?
ブログの方が管理が簡単どすえ~
 
>物語って成長するもんなんですね(シミジミ)
 
そうかも~♪
それを上手くまとめられるELたんの力量に感服さ~♪
2009/02/04(水) 17:17:17 | URL | はなえ #FSX/Slr.[ 編集]
ありがとう!はなえさん!!
『バル側』…上手くまとめられてますか?(ちょっと心配)
辻褄がきちんとあっているかどうかで、実はてんやわんやなんですよ(苦笑)

別ブログで『バル側』専用HPねぇ~……
確かにそっちの方が管理が簡単だけど…もうちょっと凝りたいってのがあるんで…
まぁ、いつ作るかは未定なんですけどね!
(はよ作れ!)
2009/02/05(木) 03:56:48 | URL | EL #QsqJ.6N.[ 編集]
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