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『スタジオ える あっと ブログ』 略して 『鼻眼鏡』!(ええええ?)
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第三四話 『簡単な事』
 人ごみの中に彼女はいた。


 忙しく人が行き交う中、彼女だけはその場で立ち止まっていた。しかも、とても悲しそうな表情で。
 そんな表情は似合わないと思った、だから声をかけた。



 その時の彼女の笑顔を、今でも鮮明に覚えている。













「あんた、アレックスになんて言ったの?」
 助手席からラモンを振り返りながらニーシャは聞いた。
 デイビットが何とか今夜泊まれるホテルを見つけた後、ニーシャはエイレを寝かしつけてからラモンの必需品を取りに行こうと提案した。だから今、車にはニーシャとラモン、そして運転席にデイビットと3人でラモンの家に向かっている。
 その途中で、今の質問が出たという訳である。
「何って?」
 とぼけないでよ、とニーシャは怒ったが、別にラモンはとぼけているのではなく純粋に何の話か分からないのだ。
「あんた達2人で何か話してたじゃない、私がデイビットに電話してた時。あの後からずっと、アレックスは不機嫌なの……もしかして気付かなかった?」
 ラモンはその情報に普通に驚いてた。
「アレックスがあれから一回も笑顔を見せてないのはおかしいのよ。
 デイビットも知らないと思うけど、あの子はね隊長の周りでは笑顔を大放出してるのよ。私と2人っきりの時はずっとブスッとした顔なのに!」
 はぁ、としか言えないラモン。
「それだから、あんたと話した後あの子が隊長相手に一階も笑いかけてないのがおかしいのよ。
 ここから考えると、彼は隊長が帰ってきても素直に喜べないのだという事なんだけど…あんた、アレックスになんて言ったの?」
 もう一度聞くニーシャに、ラモンは頭をかいた。
「一応…他の連中には言うなって釘を刺されているんだが」
「私の方が立場が上なんだから言いなさい」
 さぁ!とラモンを急かせる様に、吹き出しそうになるのを抑えるデイビット。昔からそうだったが、自分の恩師は時々ものすごく子供っぽくなるのだ。
「まぁ、俺も秘密にする必要性がわかんねーからいいけどよ?話したのは、隊長と再会した時の様子とかだから…」
 そうしてラモンはアレックスに話した同じ内容、エイレと再会した時の彼女の様子、そしてその後の出来事を語りだした……












 最初の頃は、そういう意識はまったくなかった。

 ……いや、実は無意識に感じていたのかも知れない。

 周りがからかっても気にしなかったのに、彼女に冗談交じりでその事を言われた時、複雑な気分になった。なんでそんな気分になるのかが分からなかったが。

 でも今なら分かる。


 あの頃から、彼女をそういう風に意識していたのだ。












 ニーシャに寝かしつけられてから、エイレは何度も寝ようとした。しかし、結果としては天井とずっと睨めっこしている。
 身体共に疲れきっているのに、なかなか寝付けない。その理由をしかし、エイレは何となく分かっていた。
 隣の部屋にはアレックスがいるのだ。
 デイビットが確保できたホテルは、2つの部屋が繋がっているものだった。その片方にエイレを寝かしつけ、ニーシャおよび他の皆はもう片方の部屋でもう少し話しあった。そして、ラモンの必需品を取りに行こうという話になり、アレックスを残して他の3人が出て行った。
 エイレがなぜそんな事が分かるのかと言うと、部屋を繋ぐ扉が少し開いているのでそこから会話が聞こえるのだ。決して扉の建てつけが悪い訳ではなく、もしエイレに何かが起こったらすぐに分かる為にニーシャがわざと開けといたのである。
 そのため、たとえヒソヒソ話でも彼らの声は筒抜けだったのだが、エイレが寝付けなかったのはそのせいではない。

 エイレは寝るのが怖い。

 最近、エイレは悪夢を見ない日は無い。その内容は似たり寄ったりで、大概はマティアスがエイレに失望して彼女を殺すところで目が覚める。なんでその夢なのかは、今ホテルの天井を睨みつけながらエイレは悟った。
 今の自分の、隊長としての不甲斐なさに失望されるのを恐れているのだ。
 浅からぬ中のマティアスに失望されるのも堪えるものがあるが、彼以上に失望させたくないのが隣の部屋で静かにしている人物、隊長の右腕であるユリウスことアレクサンダー・フォン・ハーツバーグ。
 ユリウスは隊長を、ほとんど盲目的にと言ってもいいほど、信用しきっていた。リアンダーの言う事に素直に従い、隊の為に体をはる。
 そんな彼が隊長の弱さを知ってしまったらどうなるか、エイレは知りたくなかった。今の自分が、悪夢程度で精神がやられてしまうのを知られたくない。隊長を信用しきっている分、それが裏切られた時の彼の表情を見たくなかった。
 だからエイレは眠れない。ここで寝て、悪夢を見たらアレックスは飛んでくるだろう。そして、不甲斐ない隊長を目撃する事になる。それだけは、絶対にあってはならないのだ。
 突然、扉をコンコンと叩く音がした。












 ラモンの話を聞いて、ニーシャは盛大なため息をついた。
「そりゃ、あの子が不機嫌になるのも無理ないわ…」
 彼を残してきたのは正解だったね、と言う彼女に他の2人は不思議そうに眉をひそめる。
「番犬用に彼を残してきたわけじゃないの?」
 そう聞くデイビットにニーシャは苦笑いをした。
「言いえて妙ね、それ……確かにそれもあるけど、あの2人は昔からとても仲が良かったでしょ?だから、いろいろ話したい事があると思うし、2人っきりにさせたんだけど…今のラモンの話を聞いて改めてそれが正解だったね」
「だから、それはどういう意味なんだよ?」
 下唇を突き出しながらラモンは言った。
「分からない?あの子はね、隊長一筋なのよ?
 その敬愛する隊長が怪我を負ったのに、自分が何も知らないなんて許せるわけがないのよ。隊長もそうだけど、あの子も相当過保護だからね~」
 特に怪我を負わせたのがあのマティアスじゃあね、とニーシャは心の中で付け加えた。












「エイレ…起きてる?」
 遠慮がちに問われる声はアレックスのものだった。その声が、自分以上に不安そうに聞こえ、エイレは、どうぞ、と優しく彼を迎え入れた。
 デローリスを送った後、ずっとアレックスの様子がおかしかったのはエイレも気づいていた。他からしてみたら、彼は不機嫌そうに見えるかも知れないが、それは彼が考え込んでいる時の表情なのだと知っていた。何が気になるか分からなかったが、今の声色から彼は自分にその考えを伝えようとしているのが理解できた。
 少し戸惑ってから、アレックスはもう一つのベッドに腰をかけた。そしてエイレも彼と向き合えるように、上半身を起こした。
 その状態が無言のまましばらく続き、突然アレックスがドイツ語で話しだした。

「君と、話したいんだ」

 エイレは目を見開く他なかった。
「今、話しているじゃない」
「違う」とアレックスは首を振った「俺は、夏の初めに日本で出会った、あの女性と話したいんだ」


 胸が、踊りだした。


 理由は分からないが、エイレは突然息苦しさを感じた。しかし、それを何とかアレックスに気づかせないように努力するものの、言った本人は構わず言葉を続ける。
「何も隠さなくていいんだ…俺は、隠されてほしくない。
 この2週間で起こった事も、この」と彼はエイレの顔に手を寄せる「顔の傷だって」
 左頬に触れそうになった時、思わずビクっと後ずさるエイレ。触れられて痛いからではなく、隠しているはずの傷を事を知って吃驚しているのだ。そして、自分が迂闊だったのを思い知った。ラモンに、その事を言わないように念を押しておくべきだったと。
 しかし…アレックスだったら、たとえ彼から聞かなくても分かってしまう可能性がでかい……

「どうして隠したいのかも、何となく分かる……君と同じ立場にあったら、誰でもそう感じてしまうから……」


 怖かったよな。




 息が、止まる…

 無意識にエイレは首を横に振り始めた。

「自分に何が起こるか分からない…殺されるかも知れない…それを恐れるのは当たり前なんだ」

 違う…

「自分だけじゃない、他の皆の事を思って怖くなるのも当たり前」

 やめて…

「恥じる事なんてない…恥ずかしがる事もない…
 誰も君を責めたりはしな――」


「やめて!」


 悲願するように声をあげるも、アレックスは怯まなかった。
 むしろ、怯んでいるのはエイレの方。
「……怖かったんだろ」
 静かに、優しく、諭すように言う…
 それが、限界だった。
「怖かったわよ!状況が分からないし、皆が無事か分からないし、マティアスと再会するなんて…っ!」
 高が外れたように、怖かったと連呼するエイレ。
「レイプされそうだったのよ!」
 ここではじめてエイレはアレックスの顔を見た。
 もしここで彼が、驚いたり、傷ついた表情を見せていれば、エイレはあふれ出てくる感情の波を抑える事が出来ただろう。それが良い事か悪い事かを別として。しかし、アレックスは表情を変える事はなかった。
 エイレの言う事をすべて受け入れ、しかも許してくれそうな、慈悲深い表情だった。
 だから、エイレが箍が外れたように自分の心の内を溢れさせた。
「あいつ等…何をするか、全部聞こえてた!私が理解できないと思って、全部話してた…
 押さえつけ方、マティアスにばれない方法、そして知りたくなかった具体的な事までも…っ!」
 あふれ出す言葉と涙は、もう止める事は出来なかった。
 しゃくりをあげながらも、話すのを止めないエイレにアレックスはベッドから降り、少し彼女に近づきその手に自らのを重ねると、躊躇なく彼女は握ってくる。
 そして、どちらからともなく2人は近づき、お互いを強く抱きしめた。











 本当に、簡単な事だったんだ…
 すごく簡単すぎて、今の今まで気づかなかっただけ。
 腕の中で泣きじゃくる彼女を抱きしめながら、俺はやっとわかった。


 彼女が好きなんだ。




 どうしようもなく、エイレが好きなんだ。





↓あとがき

第三四話の作者の心境とかけまして、クールポコと解きます。
(その心は?)


「やっちまったな!」


(……なんか間違ってるだろ?)
うん、私もそう思う……



ええ、と言う訳でちょっと恥ずかしい第三四話、完成です!

何で恥ずかしいかは、読めば分かります(苦笑)
(↑当たり前だろ(汗))
でも、ずっと書きたかったシーンなので、後悔はありません。
恥ずかしさ大爆発ですけど!(爆)


来週もまだアレックスのターン(笑)だと思いますが、これが終わったらやっとグアテマラ編は終わります。(長かったぁ~!)
さてさて、これでやっと姫様を探す事に専念できますが、次はどこに行くんでしょうね?
皆様の予想受付中!
当たっても賞品とかは何も考えていませんが!!(爆)




P.S.
前回の話ではなえさんが展開を予想していたみたいですが、個人的にとても興味があります!
差し違えがなければ、秘密で良いので教えて欲しいなぁ~…なんて(苦笑)
嫌だったら、上の発言は気にしないでくださいね?

ちなみに、他の方の予想も聞きたいです!
(読んでもらってるだけありがたいんだから、そんなわがまま言うなっての)

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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

コメント
この記事へのコメント
ええと
基本的に、展開の予想はしてません。
「この人はどうしてこうなのかなぁ」とか、そういう方に目がいくので…(^_^;)
私、何か、変でしょうか???
(↑ちょっと心配…。)

ま、とにかく、次回を楽しみにしていま~す♪
2008/11/11(火) 07:11:49 | URL | うだジロー #-[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2008/11/11(火) 09:39:38 | | #[ 編集]
予想を書いたよ♪
上のコメントに予想を書きました!
どうだ!(笑)

しかし、今回の話・・・

感動した!!!

シーンが目に浮かびましたよ。
んで切なくなっちゃった(ノ_;)
自分の「後ろ側にあるモノ」しか求められないのはツライです。
程度は低いけど自分も同じ悩みを抱えているから、エイレの気持ちに感情移入しちゃった。
今日は思いっきり泣きます・・・
2008/11/11(火) 09:45:08 | URL | いとうはなえ #FSX/Slr.[ 編集]
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