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『スタジオ える あっと ブログ』 略して 『鼻眼鏡』!(ええええ?)
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第三〇話 『王女親衛隊、集結』
 ふと、アレックスは懐かしい感じがした。いや、厳密には懐かしくもなんともない気持ちだ。むしろ胸が悪くなる感じ。
 しかし、それをわざわざ「懐かしい」と思ったのには訳がある。前にこの感じを味わったのが、ずいぶんと昔だからである。
 そう、自分がまだユリウスだった時に。
 アレックスはその『いやな感じ』の元を探るべく、自然とかけ足になっていた。街の中心部から離れ、人気の少ない広場に出て、アレックスがやっと足を止めたのは廃墟になっているビルの手前。何となく、昔スタントをしたホラー映画のビルを思い出した。似てはいる、しかし今は昼間で雲一つない晴天。怖くもなんともない。
 もともと、アレックスは幽霊やら呪いやらを信じていないから怖いとは思ってない。でも、彼は今ビルに入る事を躊躇っている。映画の話を思い出したからではなく、彼の『いやな予感』が何を意味するのかを確かめなければならないからだ。
 ユリウスはそれをたどり、命の危険にあったジェネを見つけた。今回もジェネか、もしくはエイレか?そして何より、その見つけた人は無事なのか?
 ヤバい、とアレックスは思った。
 気が動転し始めている。気が動転すると冷静な判断が出来なくなるうえ、彼の『勘』も鈍るのだ。
 しっかりしろ!とアレックスは自分に言い聞かせた。今ここで怖じけずいてどうする?!


 ピルルルル…ピルルルル……


 かすかに機械音が聞こえ、何の音だ?と辺りを見回して気づく。そう言えば新しい携帯を買ったんだ!
「…はい」
『ちょっとアレックス!あんた今どこにいるのよ!?』
 声は、なぜか興奮気味なニーシャだった。そういえば今朝グアテマラに着いたはずだったなと思いだす。
「街はずれの広場近くの廃墟のビルだ」
『は?何でそんな所にいるのよ?』
「いやな予感がするんだ…だからちょっと見てくるから後でかけなおしてくれるか?」
 ちょ、ちょっと!とニーシャは慌てた。
『今からそっち行くから通りの名前くらい教えなさいよ!』
 そんな時間はないのに、と思いながらも律儀に通りの名前を錆びれた標識から読み取り教えた。そして別れのあいさつも早々に、携帯を切り廃墟のビルの中へと入っていった。
 最初は警戒して階段を上がっていったが、複数の人の声と女性の叫びが聞こえ、アレックスはその階で止まった。そして気づかれないように近づくと一人の男が囲まれているのが見えた。誰だろう、と疑問がわく前にアレックスは気づいてしまった。気づいて、思わず吐き出す。

「あの、バカ野郎……!」










 電話を唐突に切られ、いつものニーシャだったらカンカンになるところだが、今回は機嫌が良かった。いや、機嫌が良かった所じゃない。今の彼女だったらどんな罵声罵倒を浴びせられても相手を許せただろう。それくらい嬉しい出来事があったから。
 ラ・アウロラ国際空港に着いて、ニーシャとデイビットは真っ先にグアテマラ・シティへとバスで向かった。車をレンタルしても良かったのだが、一応アレックスと合流してからの方が良いだろうと判断したわけだが、それが良かった。
 バスから降りてデイビットに荷物を取ってくるよう頼んでおき、先にバスターミナルに行くと、彼女がいた。
 まさかと一瞬目を疑った。アレックスが1週間以上も探して見つからなかったのに、今日着いた私たちがもう見つけたの?
 周りの音が消え、聞こえるのは自分の心臓の高鳴りだけ。だから、彼女を呼んでも、ちゃんと声が出たのか分からなかった。
 しかし、彼女は顔を上げた。
 2週間ぶりの顔がやっと見れて、ニーシャはわき目もふらず彼女に抱きついた。














 あの時は油断したのだとずっと思っていた。
 アリスタウスは目の前の攻防を眺め、自分のその考えが間違っていた事に気づく。
 あの時、『子獅子』は助けに来た『白ネズミ』を叱咤しながら何とか逃がし、それに俺達が追い付かないように邪魔をした。薄暗い地下の通り道だったし、障害が多かったので、攻撃が全く当たらないのも地の利をちゃんとよんでいなかった自分達の油断が招いた結果だと結論した。
 しかし、今目の前にいる『子獅子』はどうだ?
 あの時は自分よりも年下だった『子獅子』だが、今は年齢も身長もアリスタウスとほぼ同じになり、顔つきも大人になった。だが何よりも、彼の動きが凄い。
 最初に蹴り倒した男を抜かして、相手はナイフを持った男5人。それに怯む事もなく、『子獅子』は適切かつ力強い一発を叩き込んでは男たちの手からナイフが落とされ、まるですべてが一連の動作のように流れる動きで急所を突く。
 ここまでは喧嘩慣れしているとしか思わなかったが、よく観察していると『子獅子』は死角からの攻撃を何度も、何度もかわしているのだ。喧嘩慣れしているのなら、多少相手の動きが読めるし気配も感知できるが、彼の動きは明らかにそれ以上だった。よほど熟練した戦士でなければ、あんな動きは出ない。
 1人1人と倒されていくのを黙って見守っているアリスタウスだったが、とうとう『レランパゴ』も最後の1人となった時、彼は背中に手をまわした…

 ひやっと寒気がし、アレックスは膝を折ってから後ろに倒れた。その時、パンッと乾いた音がし、先ほどまで対峙していた男が、信じられないとでも言うように自分の胸を見降ろした。
 血が、あふれ出ている。
 男は何か言おうとしたが、首を絞めつけられたような音しか出てこないうえ、次の瞬間ドフッと血を吐き出した。そして白目をむき、先ほどまでアレックスのいた場所に倒れた。
 はっとしてアレックスが振り向くと、そこには見知った顔の男。名前は知らないが、昔も似たような状況で出会ったことがある男。
「よう、『白ネズミ』の次は『子獅子』か?こりゃ、流石の俺でも部が悪いかもな…」
 それに、たとえ俺が銃を持っていてもお前によけられる可能性があるしな、とは付け加えなかった。
 じりっ、とアレックスが動こうとするとアリスタウスは突然銃を違う方向へ向けた。なんだ?とその方向を一瞥すると、そこには知らない女性。
「デローリス!」とラモンが叫ぶ。
「動くなよ『子獅子』…お前が動けばあの女は撃たれる…まぁ、見も知らない女だろうが、後ろでひっくり返っているお前の仲間の彼女だそうだ。
 まぁ、破綻間際ではあるがな」
 そう言ってアリスタウスは少しずつ後ろへ下がってゆく。
「今回は引かせてもらう…まさか『子獅子』がここまで成長するなんて予想外だったからな。
 『赤獅子』に会えたら、マティアス様からよろしく伝えてくれ」
 そうしてゆっくりと後ずさりながら、アレックスが使ったやつとは違う階段を使い、タタタッと音だけを残して、消えた。





 ふぅ、とアレックスは息を吐いた。人を本気で殴ったのは何年振りだろう?…そして、ぽかんと口をあけているラモンに声をかける。
「エイレを探しているのに、まさかお前を先に見つけるなんて思ってなかったぞ、『ジェネ』」
 だが、意外な事に、先に反応を示したのはデローリスだった。
「ジェネ、その人もあなたの事ジェネって呼んだよね、今!」
 スペイン語では『こんにちは』と『ありがとう』位しか知らないアレックスは戸惑った。そこで藁にもすがる思いでラモンを見るが、ぎょっとした。
 怒りのような、悲しみのような、どちらともとれる目をしながら、唇を強く噛んでいたから…
「ねぇ、どうして今も何も言ってくれないの?」とデローリスは続けて言う。「なんで私を信頼してくれないの?」
「信頼、だと?」
 地を這うような声色に、意味は分からずともアレックスは鳥肌が立った気がした。そしてデローリスもまた、ビクッと体を震わせる。
「先に信頼を裏切ったのはそっちだろ!あいつと連絡を取るなんて、信じられねー!」
「何よ!」とデローリスも負けずに声を上げる。「元はと言えばあなたがちゃんと事情を説明してくれなかったからでしょ!」
「ああ、そうですか、そうなんですか!だったら教えてやるよ!
 『ジェネ』は俺の前世の名前で、エイレはその時の上司で、目の前にいるこいつはその時の同輩だ。とある姫様を守る隊なんだよ。そして、俺達が『元彼』と呼んでたのはその時の敵で、最後に逃げたあいつはその男の部下なんだよ!」
 何それ、とデローリスは弱弱しく反論した。
「そんな馬鹿げた事をよく言えるわね…」
「ほらな!どうせ嘘だと思うだろ?何でおれが真実を言わなかったかこれでわかるだろ?本当の事を言っても信じてくれないからな!だったら嘘でも、信ぴょう性のある事を言った方が良いじゃないか!」
 デローリスは複雑な表情でラモンを眺め、ラモンは床に目を落とした。
「……なんで、俺を信頼してくれなかったんだよぉ?」
「信じたかった…でも、あんたが何も言わないから――」
「お前は…俺を信じてくれなかった……っ!」
 泣きそうな声のラモン、そして本当に泣きだすデローリス。そんな2人に挟まれ、少し途方に暮れていたアレックスだが、とにかくここから出ようとまずデローリスに声をかけた。身振り手振りと簡単な英語で何とか彼女は立ち上がった。
 次にラモンに声をかけようとしたら、俺はほっとけと一喝された。
「俺には何も残ってない…『ディエンテ・デ・ティブロン』の仲間も…守りたい相手も…
それに、お前の仲間なんかじゃねーんだ。隊長には…一緒に来るなって拒否されたからな……っ!」
 目をぱちくりさせてから、アレックスは何気無く言った。
「いや、そんな事よりも死体があるここから急いで出て行った方が良いと俺は思うんだけどな?」








 廃墟のビルから出る時、3人とも無口だった。しかも肌に刺さるような沈黙なので、アレックスは居た堪れない気持ちだった。
 先ほどの2人の会話で時々エイレの名前が聞こえたので、それについて聞きたがったがどうもそんな雰囲気じゃない。出口が見え、思わずため息をつくとまた機械音がした。
 今度は余計な時間をかけずに携帯を取り出すとニーシャの元気な声が聞こえた。
『ちょっと、あんた今どこにいるのよ?』
「今からビルを出る…実は『ジェネ』が一緒なんだ」
 自分の昔の名前が聞こえ、ラモンが伏せていた顔を上げた。
『あら、そうなの!だったら王女親衛隊がそろった事になるわね!』
 まぁ、確かにお互いが誰なのか分かったよな、と少し寂しそうに言いながらアレックスたちはビルを出た。
「ちがうわよ」
 と携帯からではなく、生でニーシャの声が聞こえ顔をあげると、アレックスは携帯を落としそうになった。

「これで、王女親衛隊が集結したでしょ?」
 そう言ってほほ笑むニーシャの隣に、彼女はいた。


 2週間以上も顔を見ていないが、やつれてしまっているが、確かに彼女だ。隊長だ!
 そしてアレックスは、感極まった声で彼女の名を呼んだ。



「エイレ…っ!」




 王女親衛隊、ここにて集結。





↓あとがき

やっと終わったよ、第三〇話!

(本当にな!)

いやぁ~…長かったなぁ~エイレ拉致&グアテマラ編!
何気に読み返したら、エイレが消えたのはなんと、第一〇話なんですよね!ここで二〇話も使うとは予定外でした(汗)まだまだ書きたい事がいっぱいあるので、あとどれくらい時間がかかるんだろうとちょっと心配になってきました…

まぁ、一応エイレ拉致編はここでいったん終了ですが、エイレ達にはもう少しグアテマラに居座ってもらいます。まぁ、いろいろと話し合わなきゃならない事と、後片付けがあると思ってください(苦笑)

実は喧嘩が強いアレックス。そこらへんの事情はいつか書こうと思いますので♪
(↑そんな風に煽るなんて、ヒドイ!)
ってか、拳銃の弾を避けたところなんてありえないですよね!(爆)


ではでは、
第三〇話終了記念に一丁締めで閉めさせていただきます。

では、お手を拝借

イヨ~~


ぽんっ!


ありがとうございました(パチパチパチ)←サクラ

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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

コメント
この記事へのコメント
やったー!
親衛隊、勢揃い♪
しかし、ラモンはどうするのかしら?
デローリスとの仲は!?
気になります~(^_^;)
2008/10/07(火) 07:27:48 | URL | うだジロー #-[ 編集]
皆集合♪ですね、うだジローさん!
デローリスねぇ~…
実は彼女、ここまで大きな役割を持たせるつもりはなかったんですよ。でも、蓋をあけてみたらいろいろとキーパーソンになってくれて、(良い意味で)大変でした。

まぁ、この2人はどう落ち着くかは、私のこれからの課題ですね(苦笑)

では、フォロー編(笑)を楽しんでください!
2008/10/20(月) 12:17:50 | URL | EL #-[ 編集]
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