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『スタジオ える あっと ブログ』 略して 『鼻眼鏡』!(ええええ?)
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第二九話 『デジャヴ』
 店長に「風邪をひいた」とウソをつき、デローリスはコーヒー店で『アリスタウス』と言う人を待っていた。特徴は?と聞いても、来れば分かると『元彼』は何も教えてくれなかった。だから店に人が入ってくると、まだか、まだかと気が焦ってしまう。


 朝起きた時、何時になっても来ない手紙を待っているロサの他に、エイレも既にキッチンにいた。周りには荷物も何もなかったから、まだ出るのは先かなと推理した。
「今日は遅いね」とエイレは言った。「体の調子でも悪いの?」
 しらじらしい、と思いながらもデローリスは何とか、ちょっと熱っぽくて、と言い訳した。
「どこ行くか、決まってるの?」
 薄めのコーヒーをマグカップに淹れながら一応聞いてみるが、エイレは首を横に振った。
「バスターミナルに着いてから考える…出来るだけ遠くの方が良いよね?」
 そう言った彼女の表情は、いつもに増して疲労が濃かった。


 その会話の後、昼ちょっと過ぎにエイレはシェルターを出て行ったが、そのままバスターミナルに行ったとはデローリスは思わなかった。
 出来るだけ遠くに行きたいのなら、早朝または夜行のバスに乗るのが一番だ。空いているバスを探すために時間の余裕を持つ姿勢を見せているが、そんな筈はないとデローリスは踏んでいる。
 きっと、ラモンの所にいるのだと。そして、チケットはすでに彼が持っているのだと。
 その考えにまたいきついて、デローリスは胃のあたりがムカムカするのを感じた。しれっとウソをつくエイレも腹立たしいが、それ以上にラモンの『今でもデローリスの事を思っているんだ』という感じが許せなかった。新しい人を見つけたのなら、きっぱりとふってくれた方が良いというのに!
「デローリスですね?」
 突然呼ばれて、びっくりする。いつの間にか考え込んでいたらしい。
 名を呼んだ男性は外国人だった。見た目もそうだが、彼のスペイン語は外国人特有の訛りがある。中肉中背で、なかなか男前な顔立ちだ。
 あ、ハイ!とデローリスは慌てて返事をする。彼が『アリスタウス』なのだろう。
「初めまして、アリスタウスです。
 ミサキエイレの事で、話があると聞きましたが」
「はい…その通りです」
 ふむ、とアリスタウスは考え始めたので、デローリスは座るように勧めた。彼はお礼を言い、デローリスの反対側に座り、彼女は冷たくなったコーヒーを飲みほした。
「では、ミサキエイレは今どこに?」
「多分…私の彼氏と一緒よ」
 アリスタウスが眉をひそめるので、デローリスは付け加えた。
「私の彼氏…ラモンと浮気してるのよ、あのミサキエイレが」








 まさか『赤獅子』が浮気をする、しかも男と浮気をするとは思えなかったが、アリスタウスは黙っていた。こんな展開になるとは予想だにしていなかったが、ラモンとは『ディエンテ・デ・ティブロン』の1人だし、面白くなりそうだ。
 デローリスにはラモンを誘い出すように提案した。少し訝しんだが、俺達はミサキエイレにしか興味がないからラモンが出ている間に家を訪れて、彼女を連れていくといったら何とか納得してくれた。
 こういう時、カトの「お前は人の良さそうな顔をしていて得だな」と言った事が実感できる。
 待ち合わせ場所は近くに廃墟のビルとかが並んでいる広場にした。もちろん、『廃墟のビルとかが並んでいる』ところはデローリスに伏せて、だが。それともう一つ伏せた事は、『レランパゴ』の連中を何人か呼んだという事。
 デローリスにラモンの家を聞き出し、『赤獅子』の脱出劇を思い出し自分以外の3人をそっちに向かわせた。自分もそっちに行っても良かったのだが、これから起こるであろうデローリスとラモンの泥沼に興味があった。
 『レランパゴ』の連中と打ち合わせをし、デローリスとラモンが待ち合わせた後、廃墟まで連れてくるように指示した。自分の存在が知られる事なくこれから起こる愛憎劇を特等席で眺めるためだが、廃墟の薄暗さに何か既視感をふるい起させた。
 それが何なのかは、2人を連れた『レランパゴ』の連中が廃墟に入ってきた時、思い出せた。



 デローリスに呼び出されたラモンは、とにかく困惑していた。
 ひと気の少ない広場に呼び出されたのもおかしかったが、着いてそうそう「どこ行くつもりなの?」と凄い形相で聞かれるのは予想だにしていなかった。
「どこって、どういう?」
「誤魔化さないでよ!」といきなりキレられた。「あの女、ミサキエイレとどこに行くのかって聞いてるのよ!」
 一瞬、何を言われているのかが分からなかった。ミサキエイレ、隊長と何だって?
「まて、俺はあの人と一緒にどこへも行かないぞ?」
「あの人!」デローリスは鼻で笑った。「ずいぶんと肩を持つわね、あの女に!そんなに好きなんだったら、私をキッパリふればいいでしょ!」
 何だって?
「おい、ちょっとそれはどういう――」
「お楽しみ中、申し訳ないが」といきなり腕を捻りあげられた。「ちょっと一緒についてきてもらおうか?」


 聞いたことある声。

 もう二度と聞きたくない声。

 なぜ、『レランパゴ』の奴らがこんなところに?


 まさかと思い、デローリスの方を見たが彼女もこの状態には驚いているようだった。少なくとも、『レランパゴ』の連中は彼女の仕業ではないと胸をなで下ろす。
「さぁ来るんだ」と廃墟のビルに連れられた。
 何故かデローリスはずっと「こんな話し聞いてないわよ」と叫んでいたが、そんなの自分だって聞いていない。
 それ以上に、『レランパゴ』連中の嘲りがラモンの思考能力を失わせていた。曰く、ラモンが最後の1人だと…




 もうここで良いだろう、と誰かが言った。
 ラモンは強制的に膝をつけられ、目の前に『レランパゴ』の1人がしゃがみ込んだ。名前は知らないが見知った顔の男で、ムカつく声で、よう、と挨拶した。
「どうだ、気分は?」
 素直に最悪だと言うと相手が笑った。
「だろうなぁ、だが俺達は最高だぜ。憎き『ディエンテ・デ・ティブロン』もお前が最後の1人だからな!」
 自分が、最後の、1人…
「まさか…そんなっ…!」
「お前の前は確か、オレッハって奴だったけか?オレッハだけに、そのオレッハ(耳)を持ち帰ろうかと思ったよな!」
 そう言って『レランパゴ』の連中全員笑った。

 そんな、昨日会ったばかりだと言うのに!

「それもこれも、全部あの人のおかげさ」と、目の前の男は後ろの方を頭で指した。「なぁ、アリスタウスさん?」
 アリスタウス?…何故か聞き覚えがある名前だった。
 何かモヤモヤしたものを感じていたが、その人物が出てきた瞬間思い出した。
「お前…!」
「ちょっとどういう事よ!」
 呟くラモンの声をかき消して、デローリスが叫んだ。
「あんた達の狙いはミサキエイレだけでしょ?!何で『レランパゴ』の連中がいるのよ!約束が違うじゃない!」
 ラモンは唖然としてデローリスを見た。

 イマ、ナンテイッタンダ?

「約束も何も、ラモンに手を出すなとは一言も言ってないだろ?」とアリスタウスは嘲笑した。「それに、結局ミサキエイレは見つからなかったみたいだしな?」
「そんな!」とデローリスは真っ青になった。「ラモン言って!ミサキエイレがどこにいるか教えて!」



 ラモンの中で、やっと何が起こっているのかが、理解できた。



「残念だったなぁ?」とアリスタウスが昔の言葉で言った。「王女親衛隊の連中には手を出すなとは言われているが、お前の事はマティアス様も、タナトスもカトも知らないからな。このまま死んでも、俺は誰からもお咎めを受けないって訳さ」
 キッと、ラモンはアリスタウスを睨んだ。昔と同じように…いや、昔よりも怒りを込めて。
「お前だったのかよ…最近『レランパゴ』が雇った助っ人ってのは!」
「びっくりしたか?俺はまた『白ネズミ』と出会えるとは思ってなかったからな、びっくりしてるぜ?
 しかし、お前も難儀だな?彼女にはお前が『赤獅子』と浮気していると思われているらしいぜ?」
 アリスタウスの言葉に、ラモンは思わずデローリスの方を見た。
 彼女も『レランパゴ』の連中も、いきなり2人が知らない言葉で話し始めた事に驚いているようだった。
 不意に、ラモンは泣き出しそうな表情になった。何か、いろいろと遣る瀬無くなったのだ。
「あの人は…」絞り出すように言うラモン「あの人は、俺には覚悟がないって、一緒に行くのを拒否されたのに…!」
「こりゃあ良い!『赤獅子』にふられたうえ、彼女にもふられたか!」
 ひとしきり笑うアリスタウス。しかし、それが止むとスッと表情が変わった。昔、ラモンがジェネだった時のアリスタウスに戻っていた。
 そして、スペイン語で言った。
「そいつは何も知らない…お前らの好きにしな」


 そこからの出来事は、妙に遅く、霧がかかったように感じた。

 デローリスの悲痛の声。

 にやけ顔でナイフを取り出す『レランパゴ』の連中。

 そして、冷たい眼のアリスタウス。

 ラモンは、自分がジェネに戻った気がしていた。周りが薄暗いせいもあるが、何よりアリスタウスの目がそう感じさせた。

 あの時、ジェネは本当の『死の恐怖』を味わった。
 ここで殺される。もう助からないんだと、諦めてた。

 今も、それとまったく同じ状況…まさにデジャヴ。



 なのに、何かが足りない…



 『レランパゴ』の一人がラモンを刺そうとする。痛いだろうな、とラモンが思っていたら、突然、体が後ろに引っ張られた。
 何だ?と思って見上げたら知らない男がラモンの腕を捩じ上げていた男をのしたところだった。
 そして、倒れているラモンをとび越え、一番近くにいたナイフを持った男に蹴りを入れ、『レランパゴ』とラモンの間に着地した。


 デジャヴ


 身長も、髪の毛の色も違うのに、ラモンにはこの男が誰なのか分かっていた。




「ユリウスっ……!」





↓あとがき

ちょっと長めだ、第二九話!!

(本当にな?)


やっとここで、グアテマラ編の佳境に入れました!
とにかく何が書きたかったかと言うと、一番最後の場面でしたね♪
『デジャヴ』ってのは第二七話の過去話の事なので、忘れた、もしくは読んでない方はちょっと読んでいただけると嬉しいな

では、来週は今週の続きを書きますので!
(当たり前だ!)
今回は自信を持って言えます!!


来週もお楽しみに!

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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

コメント
この記事へのコメント
はいっ!
楽しみにしますっ!!(≧▽≦)ノシ
ワクワク♪

それにしても、ユリウス、美味しい~!
いい出番だわぁ!
2008/09/30(火) 05:18:37 | URL | うだジロー #-[ 編集]
Oh!what a exciting story It is!!
最大のピンチに仲間が駆けつけた~!!
でも、どうやって見つけたのかが気になるYO!!
待て、次号!!( ´>ω<`;) bΣ

・・・アリスタウスって嫌なやつ(爆)
2008/09/30(火) 08:16:41 | URL | いとうはなえ #FSX/Slr.[ 編集]
こんばんわ~
文才ありますねぇ。
すごい^^
続き、お願いします!
2008/09/30(火) 23:43:50 | URL | ウルズ #SFo5/nok[ 編集]
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