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『スタジオ える あっと ブログ』 略して 『鼻眼鏡』!(ええええ?)
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第二七話 『部下達』
 いやな予感が強くなった。



 隊長が不在の今、ネストルはユリウスに『お前が指揮を取れ』と無理難題を吹っかけたが、それでも何とかこなそうとする彼の性格を把握していたのだろう。今のユリウスは不安よりも責任感を強く感じていて、自分の命に代えても王女と隊は守らなければと信じている。
 そんなユリウスは今、やっと手に馴染んできた剣を片手に城の抜け道を駆け抜けていた。本来なら王家しか知らないはずの抜け道は、王女親衛隊だけは特別に教えてもらっている。
 ほとんどの隊員はその抜け道を使わないのだが、まだ隊に入って間もないジェネはそこを本拠としている。本来なら抜け道というのは人に知られちゃいけないので使い事を躊躇われるが、『斥候見習』のジェネには良い訓練場であるのだ。身軽ですばしっこいジェネは、薄い壁の反対側にある抜け道をほとんど音なく走り抜けられる。そうやって場内で不審な動きがないか知るのには良いが、どうもジェネは噂話の方が気になるようで、誰が誰と付き合っているだの、こいつら不倫しているだの、知りたくもない事を伝えてくれる。


 ユリウスはその抜け道の一つ、しかも場外へと続く地下にある道を走っていた。
 悪い予感がすると、ユリウスは遠慮なく隊長に報告し、それを一緒に確かめるという手順が出来上がっている。例え何も見つからなかったとしても、『もし』の可能性を否定してはいけないと隊長はいつもユリウスの事を信じてくれた。そんな隊長に報いりたくて、ユリウスは自分の感じた事を押さえつけなくなった。
 そして、先ほども嫌な予感がし、王女とサンディにネストルと合流しろと忠告してからユリウスはその予感の元の方へ走りだした。


 場外へと続く抜け道を初めて使うが、何の迷いもなく突き進む。どんどん走っていると、数人の怒鳴り声と足音が聞こえてきた。そしてその中に、まだ声変わりしていない幼い声があった。その声を聞いて、ユリウスはいささか腹が立った。


 あいつ、今度はどんなトラブルに巻き込まれたんだ?


 ユリウスは剣を鞘から抜き出し、走る勢いを殺さず声の元に近づく。そして避けるのに精いっぱいのジェネの白い頭が見え、そんな彼の頭上を何かきらりと光る物が見えた。ひやっとした物が背中を駆け上がり、ユリウスはジェネの前腕を掴んで自分の持っている剣を振り上げた。
 ガキンッ!と腕に振動が伝わったが、それを完全に受け止めるのではなく、横に受け流す。そして同時に相手に蹴りを入れる。相手がウッと呻くのが聞こえ、その後ジェネが尻もちをつく音が聞こえた。
「も、もっと優しく扱えよな!」
 そう叫ぶジェネに一喝したいユリウスではあったが、ここは我慢しなくてはと自分に言い聞かせる。
「そんな話は後だ!あいつ等は誰なんだ?」
「知らねーよ!変な音がしていると思って確かめに来たらあいつ等がいたんだ」
 なんだと?とユリウスは相手を見据えたら、そこには3人の男が立っていた。1人は先ほどユリウスが蹴ったので、少し前かがみになっていた。しかし、特徴といったら3人とも肌の色が浅黒かった。
 ああ、連合なんだとユリウスは気づいた。王国には、例え少し日焼けしている人がいても、この男たちほど浅黒い肌の人はいない。ネストルが、それは気温のせいだとかなんとか言っていたが、あまり良くは覚えていない。
 なんにせよ、相手は敵に間違いない。
「おい、なんかガキが増えたぞ?」と一人が言った。
「気にするな」と、もう一人が言う。「『赤獅子』は今、城内にはいないんだ、こんなガキがもう一人増えたところで問題はない」
 なぜ彼らが隊長がいないという事実を知っているのか、ユリウスは分からなかった。しかし、確かなのは一つ。彼らをこれ以上城に近づけてはいけない!


「愚弄するな!」とユリウスは吼える。

「今は俺が王女親衛隊、隊長代理だ!」











 アリスタウスはデローリスについて集まった資料に目を通していた。しかし、彼女の事をどんなに読もうが気になる点が見つからない。そろそろ飽きてきたと資料を放り投げようとしたら、ひとつ面白い事実が書かれてあるのが見えた。
 曰く、デローリスは元『ディエンテ・デ・ティブロン(サメの歯)』のメンバーだった男と付き合っているとの事。
 『サメの歯』と言えば、少し前までここら辺一帯を縄張りにしていたストリート・ギャングである。しかし、『サメの歯』はライバルグループに潰され、その上生き残っているメンバーをヘッド・ハンティングしている。
 面白い、とアリスタウスは思った。デローリスをつけて、結局なにも成果が出せなくても、うっぷんを晴らすネタが出来た。


 どうも、嫌なところで上司のマティアスと似ているアリスタウスである。











 グアテマラについて1週間、エイレが拉致されてから2週間たっていた。アレックスも不安を感じていない訳ではないが、エイレがいなくなった当初に比べればマシである。
 彼女のだいたいの居場所が予想できることもあるが、もうひとつ、アレックスは感じていた。王女親衛隊の一人、つまりジェネの存在だ。彼の存在が日に日に強くなっているのだが、エイレと同様なかなか見つけ出せないのだ。
 この事実にアレックスは一つの仮定を立てている。
 これまでの王女親衛隊は、記憶が戻っていないか、戻っていて自ら他の隊員を探し出したいという意欲があった。だから皆、結構あっけなく見つけ出せた。
 しかし、今はジェネどころかエイレもなかなか見つけ出せない。
 ジェネはもともと反抗的だったし、半ば強制的に隊に入れられたので戻りたくないと思っても仕方がない。でも、それならエイレは?
 普段なら彼女が皆と合流したくないと思うはずはない。でも、合流したいと思っているのなら、見つけ出すのにこんなに時間がかかるのもおかしい。つまり、何らかの理由でエイレは見つかりたくないと思っている。定期的にニーシャと電話で話し合った結果、そういう結論にたどり着いた。


 何でエイレが合流することを拒んでいるのかは分からない。隊長としてそれはありえない。

 だが、エイレとしては?



 ニーシャの考えた『1番最悪な出来事』があの電話の後、起こっていない事をアレックスは祈った。そして、どうか、彼女の近くにジェネがいる事も願った。











『王女のために命をはれる覚悟がない者が、一緒に着いてきても迷惑なだけ』


 隊長の言葉をラモンはずっと考えていた。
 あの時は何も言い返せず、黙ったまま彼女はその場を立ち去ってしまったのだが、もともと自分は戻りたいとは思っていない。
 ……少なくとも、そう思っていたはずだ。
 でも、隊長と過ごした日々、情報収集に駆け巡り回った1週間は、自分にとってはとても充実していた日々だった。本音を言ってしまえば、ギャングにいた頃よりも充実していた。



 でも、その事実に気づきたくなかった。
 それを認めちゃうと、『ラモン』としての人生を否定してしまうようで、嫌だった。でも、隊長の言葉で、なんで充実感が違うのか理解してしまった。


 王女親衛隊には使命がある。

 その使命感、そして目的。ギャング時代にはなかった事だ。
 それを鬱陶しく感じている自分は、確かにいる。でも、そのような日々に憧れている自分がいるのも否めない。



「やっぱり…」とラモンは独りごつ「なんだかんだ言って…俺は隊長を尊敬してるんだよな……」




 そうでなければ、ここまで傷つく事はないはずなんだ。





↓あとがき



元気ハツラツ、第二七話!

(↑だんだん意味不明になってきてるぞ)


察しの通り、『部下達』とはアレックス、ラモン、アリステウスの三人です。

ちなみに過去話でアリステウスは浅黒い肌の三人組の中で「気にするな~」と言っている人物です。つまり、はなえさんの予想したとおり、『子獅子』と『白ネズミ』はユリウスとジェネの事!

『子獅子』=『赤獅子』の後継者という事から
『白ネズミ』=ネズミのようにすばしっこく、髪の毛が白い事から

もっとも、このように呼んでいるのは敵の方だけです。理由はまぁ、名前を知らないから付けたあだ名的なものですが(苦笑)


では、なんかアレックスたちと合流することを無意識に拒否しているエイレですが、来週はどうなるんでしょうね?
思ってた以上に長くなっているエイレ拉致&グアテマラ編ですが、あともう少しで次に進めますので!


では、来週も楽しめますように。(合掌)

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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

コメント
この記事へのコメント
おおぅっ!
「子獅子」はユリウスのことでしたか!
これから、エイレと仲間達は合流できるのかな?
そして、やなヤツに目をつけられたデローリスの運命は!?
楽しみにしてまーす♪
2008/09/16(火) 08:44:22 | URL | うだジロー #-[ 編集]
言葉の魔術師♪
ELたんってば、言葉の魔術師♪

>そうでなければ、ここまで傷つく事はないはずなんだ。

ラモンのこの言葉突き刺さります。
傷ついてから気づくことってあるんですよねぇ。
「あ~自分のこの気持ちに気がついてれば、もっとうまく立ち回れたのに!」
みたいな~(^_^;)ゞ
「長くなっているエイレ拉致&グアテマラ編」、とELたんが言っていますが、すっごい読み応えあります!
次回も楽しみでーす♪
2008/09/16(火) 11:35:29 | URL | いとうはなえ #FSX/Slr.[ 編集]
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