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『スタジオ える あっと ブログ』 略して 『鼻眼鏡』!(ええええ?)
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第二六話 『覚悟』
 リアンダーはマティアスと闘っていた。

 剣がぶつかり、刃が滑る。切っ先が自分の体を貫く前に剣の向きを変え、体も少しひねる。そうすると相手も慌てて体制を整え、隙を見せないようにする。そのまま勢いを殺さないため、お互いクルンとその場で回り、振り向き様に一撃を繰り出す。

 剣は今度、弾き飛ぶ。

 お互い体力も腕力も互角だ。なかなか勝負がつかない。



 なのに、突然、自分の方が力押しされる。

 地面に背から叩き付けられ、起き上がろうとするといきなり首が絞められた。

 息苦しさの中で、おかしい、と思った。

 なぜこの手を振りほどけない?




 突然、女性の呻きが聞こえた。

 良く知っていて、とても身近な声色……


 自分の、エイレの声色。




「ずいぶん、弱っちくなったなリアンダー……残念だ」


 マティアスがそう言うと、首の圧力が強まり――







 ――そこで目が覚める。

 本当に首を絞められていた訳でもないのに、呼吸が乱れていた。そして同時に、胸をこみ上げるものを感じ、急いでシンクに飛びついた。

 最近ずっとこの調子だ。
 夢の中では昔の自分とマティアスが戦っていて、自分だけが徐々に今の、エイレの姿になる。そして、自分は負け、マティアスが失望し、私は…

「……チクショウ…っ!」
 口を手の甲で拭いながら、エイレは涙を流した。









 デローリスはレオナ――いや、エイレミサキと呼んだ方がいいのだろうか?――の部屋をノックしようとしたら、中からわずかに嗚咽が聞こえた。
 偽名の事、ラモンとの関係の事、そして元彼の事をきちんと聞きたかったのに、泣かれてしまうとそれを聞く自分の決心が揺らぐ。なんで泣いているのかは分からない。そしてデローリスも泣いている相手を質問攻めできるほど無神経でもない。
 仕方なく、ノックしようと揚げていた手を下げ、仕事用のカバンを持ち直し階段を下りた。
 夕方、仕事から帰ってきたら『レオナ』は既に寝ていた。毎日何をしているのかは分からないが、いつもやつれて帰ってくると他の人たちから聞いている。そして、『レオナ』が遅くまで帰らない時は、丁度デローリスがラモンと会ってない日と重なる。
 それがどう意味するかは、あまり深く考えたくない。しかし、いつまでも真相を恐れて何も聞かないままでいては駄目だと、今日覚悟を決めたのだが…



 泣かれては、せっかくの決心も、鈍る。













「出てきましたよ、アリスタウスさん」
 そう呼ばれた色黒の男は顔をあげた。古臭い建物から、上司に言われつけているウエイトレスが出てきた。名前はデローリス。下町のレストランに働いていて、父親からの暴力に耐えきれずDVシェルターに身を寄せている。
 王女親衛隊とは何の関わりもないように感じるが、上司であり自分が心から崇拝しているマティアスの言葉を疑う事はない。それに、もしこれで何も分からなかったとしても、特に問題にはならない。
 『赤獅子』は王女を見つけるまで、泳がせておくのが一番だと彼もまた理解しているのだ。理由は簡単、自分達では王女を見かけたとしてもその人が彼女だと気付かないからだ。前から認識があった者同士なら、今の姿が変わったとしても大丈夫だが、片方が相手の事を知らなかったらそのまますれ違ってしまうのだ。
 たとえば自分の場合、マティアス直属の部下なら分かるのだが、これがタナトスあたりの部下だと面識が全くない。だから道でタナトスの部下に会ったとしても、相手が仲間なんだと気付かないのだ。
 この問題を皆は最初、さほど気にしてはいなかった。その理由は、皆の姿にある。『ゼーレン・ヴァンデルング』をくぐった前と後とでは見た目がほとんど変わっていないから、たとえ相手が自分の事を知らなくても見た目で分かると考えていたのだ。
 しかし、『赤獅子』の登場でその考えが浅はかだったと理解した。
 どう逆さに見たって、今の『赤獅子』の姿は昔とは似ても似つかないのだ。だから、女王も昔と姿が違っている可能性が高い。そうなると、自分達の歩が一気に悪くなる。
 それなら、親衛隊の奴らに王女を見つけさせる方が一番いいのだ。


 しかし、とアリスタウスはデローリスをつけながら考えた、このウエイトレスはどう関係しているのだろうか?まさか実は親衛隊の一人という事はないと思うが、自分もマティアスも親衛隊5人全員を見知っている訳ではない。
 特に自分は認識できる奴と言ったら2人しかいない。



 一度だけ対峙した事のある、あの『子獅子』と『白ネズミ』だけである。












 昼過ぎに、エイレはまた『GENE』から手紙をもらい、指定の場所に足を運んだ。そして、着いてそうそう「『レオナ』は偽名なのか?」とラモンに聞かれた。
 吃驚していると、ラモンは構わず続けて言った。
「昨日デローリスから電話があって、アンタの事を聞かれたんだ。『エイレミサキ』って本名なのか?」
 怒っている、というよりはイラついている様子だ。多分、なぜ彼にウソをついたのか非難されるのだろけど、そのせいで彼は大きな問題を忘れているみたいだ。
「……御前映礼…確かに私の名前よ」
「なんだよ…っ!デローリスの言う通り、マジで偽名を使っていたのか……
 何でおれにそう言わなかったんだよ!」
 しかし、そういきり立つラモンに、エイレはゆっくりと落ち着いた声で言った。


「敵を欺くには味方から、でしょ?」


 なんともない言葉なのに、ラモンは何故か背筋が凍る思いをした。
 隊長は別に、冷たく言い放ったわけではない。ただ、信じられないほど冷静に言ってのけたのだ。
 それが何故か、とてつもなく怖く感じた…


「ラモン」と隊長が声をかける。「デローリスは、どこからその名前を知ったの?」
 何でそんな事を聞くのかと問い返す前に、ラモンは初めて事の重大さを知った。


 つまり、マティアスが近くにいるって事だ!


「つまり、私もこの町から出て行った方が良いわね…ここに留まってちゃ、見つかるのは時間の問題だから…」
 え?とラモンは吃驚した。
「ちょ、こんなに早くかよ!俺は何の準備も――」
「何を勘違いしてるの?」
 今度こそ、隊長は冷たく言った。
「あなたはこのまま残るんでしょ?」



 記憶が戻っても他の隊員を探そうとしなかったラモンは、今の人生が良いと言っている。そこから引き離すのは忍びないとエイレは考えている。
 しかし、言葉として出てくるのは、冷たいとも感じる程、冷静な王女親衛隊隊長『赤獅子』リアンダーの言葉だ。




「王女のために命をはれる覚悟がない者が、一緒に着いてきても迷惑なだけよ…」





↓あとがき

隊長怖い!な第二六話!!


今回は新しい名前が出てきましたね、アリスタウス♪
所謂、前回マティアスが顔を近づけて話してた優秀な部下ですね!


読むのにはいいけど、タイプするのがとても面倒くさいです!(爆)


彼は王女親衛隊の隊員2人と認識あると言ってますが、いったい誰なんでしょうね?
……まぁ、『子獅子』と『白ネズミ』と呼んでいるんだから、何となく分かりそうなんですが(苦笑)


そしてなんと言っても隊長!
なんかどんどんやつれていく上、毎日悪夢を見るようになって、精神的に凄く参っているみたいです……


ど、どうなるんでしょう…この話?
(作者が聞くな!)



では、隊長が壊れないのを祈りながら、次週お会いしましょう!!

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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

コメント
この記事へのコメント
ドキドキ
本当に、隊長が壊れないことをお祈りいたします(-人-)
って、あとがきの中に『子獅子』って書いてあるんですが、エイレは『赤獅子』ってより、かわいいから、確かに『子獅子』って感じがしますねぇ(^_^;)
2008/09/09(火) 06:39:23 | URL | うだジロー #-[ 編集]
続きが気になります(>_<)
>「王女のために命をはれる覚悟がない者が、一緒に着いてきても迷惑なだけよ…」

そうかもしんない、そうかもしんないけどさぁぁぁ。
エイレ一人で大丈夫?(汗)

アリスタウスが対峙した事ある二人って、「ユリウス」と「ジェネ」ですよね?
しかし、敵側は姿がそんなに変わってないのかぁぁぁ。
世の中に起こることは何か意味があること、エイレが今女性なのも何か意味があるのです。(スピリチュアル風だ)

アリスタウスをアリスタロウと読んでしまったのは、ココだけの秘密です(笑)

あとね、ELた~ん!『バル側登場人物』のカテゴリーを改めてみてビックリ!
転生前と転生後のポーズが・・・・
芸が細かい!分かりやすい!
2008/09/09(火) 19:00:29 | URL | いとうはなえ #FSX/Slr.[ 編集]
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