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『スタジオ える あっと ブログ』 略して 『鼻眼鏡』!(ええええ?)
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第二三話 『ラモンの事情』
 ジェネの頃の記憶が戻ったのは、実はだいぶ前の事で、ラモンがいたギャングがまだ分散していない頃である。
 バーでプールを仲間と楽しんでいた時、玉の狙いを定めていると後ろから昔の言語が聞こえた。あまりにも吃驚したので狙いが外れてしまったが、そのまま大声で毒づくと後ろの声は一瞬止むだけで、何もなかったかの様に話を続けた。
 自分の順番がまたまわってくるまで時間があったから、ラモンはその人たちの会話に耳を傾けた。なぜこんな聞いた事もない言語を知っているのかが気になったが、少しずつ記憶が鮮明になっていった。そして、後ろの奴等が所謂、王女親衛隊の敵である事が分かった。
 誰も彼らの話を聞いていない―いや、この場合理解できない方があっているだろう―と思っているからか、実にいろんな事をベラベラ喋ってくれた。仲間や上司の愚痴、今彼らの面している問題点、そして基地の居場所。それらの重要点だけを、ラモンはしっかりと覚えている。


・敵のトップにいる名前:タナトス、カト、マティアス

・問題点:思っていたよりも探す土地が広く、人手が足りない

・基地:グアテマラシティから車で3時間離れている所


 これらの事を覚えているのは、彼が元から記憶力が必要な仕事をしているからである。
 ギャングにいた頃のラモンは、どちらかというと裏方な仕事が多かった。もうちょっとましな地域に産まれてきていたのなら、彼は探偵になっていたのかも知れない。それほどラモンの情報収集力は凄まじかったのである。
 人目につきやすい姿をしていたジェネの武器はその小さな体とすばしっこさだった。逆にいえば、そこを強化させなければ彼は生き残れなかったのだ。他のストリート・チルドレンは、捕まりそうになっても、人ごみに紛れてしまえば知らん顔で歩いていれば逃げ延びられるが、ジェネでは通用しない作戦だ。
 それでジェネはターゲットの財布をすってから3歩まってから走り出すようになるのだが、勘の良いユリウスには通用しなかった悔しい記憶が残っている。
 しかし、ラモンとなった今ではそんな真似をしなくても良かった。彼にはちゃんとした家族がいたし(ギャングに入った時、勘当されたが)髪や目の色は周りの人と何の変わりもない。それに、スリをしなくても生活できるのだ。
 ジェネもラモンも、所謂「裏の世界」に住んでいるのだが、それしか生きる方法がなかったジェネに対して、ラモンは自らその道を選んだ。だからこそ、彼は昔の記憶を『厄介なものが帰ってきた』と表現したのだ。今がどんな状況であれ、ラモンは自分で選んだ人生を歩んでいるプライドがあるからだ。



 だからラモンは昔の仲間を探そうともしなかった。
 もともと王女にはそんなに思い入れがなかったし、半ば強制的に親衛隊に入らせられたのだ。そして今から思い返してみると、あの時ジェネはリアンダーの気まぐれで入れられたようなものだ。彼一人が抜けても、何の問題はないだろう。




 そう思っていたのに、彼がいたギャングが分散してしまった。理由はトップが無くなった後の世代引き継ぎが上手くいかない時に敵対グループが攻めてきてしまったためである。
 さらに話を拗らせるのが、世代引き続きの候補の一人が敵対グループのトップの女を寝とった…と聞こえは良いが、つまりはレイプしたのだ。そのせいで女は自殺をし、怒り狂った敵対グループのトップはその候補だけでは怒りが収まらないと、ラモンのいるギャングを完璧に潰すことを生きがいとしている。
 それで分散したのだが、どうも奴はギャングの一員だった人すべてを無きものにしないと気がすまないようだ。何10人もいたギャングのメンバーは、今ではラモンを入れて10人以下。
 それでも、ラモンは王女親衛隊に戻ろうとは思っていない。ギャング時代の仲間が残っている限り、そしてデローリスがいる限りその考えは揺らがない。


 しかし、そうは言ったものの、ラモンは別に隊長を嫌っている訳ではなかった。むしろ、尊敬、そして恩を感じていた。
 気まぐれであれ、リアンダーはジェネを「裏の世界」から救い出したのは変わらないし、人の温もりを教えてくれた。アレやれコレやれと口うるさかったが、ジェネの意見は尊重したし、言いたい事はちゃんと聞いていた。
 だからラモンは今の隊長の手助けを惜しまない。
 女になってしまったことには少々驚いたが、やはりと言うべきか、全体の雰囲気が変わっていなかった。それにどこかほっとしている自分がいる事は、隊長には秘密だ。










 隊長はすでに集合場所にいた。服装はこの前会った時と同じだったが、綺麗に洗ってあるのがすぐ分かった。シャワーも浴び、見た目を整えたせいで、一瞬違う人じゃないかと思ってしまった。
 だが、そう思ってしまうって事は、隊長はかなり酷い状況に置かれていた証拠という事だ。
 その考えを、しかし、ラモンは頭から追い出そうと頑張った。隊長のそのような状況を思い浮かべると、何か自分の中で大切な物が崩れ落ちそうになるからだ…
「よう」と呼びかけると隊長は振り向いた。頬と顎の境目にある白い包帯が目に付いた。
「とりあえず、必要だと思う物を持って来たぜ?」と、隊長からの忠告を聞きスペイン語で話す。「古着を数枚と特殊メイクセット…金は後で返してもらえば良いさ」
 袋を渡すと隊長はお礼を言った。
「思ったんだけどよ、かつらとかはいらないのか?もしくは髪の毛を染める液とかさ?」
「そんなのをつける方がかえって不自然よ?」と隊長は微笑んだ「お金をかければ良い物が手に入るけど、今の私には資金がないし、ラモンにこれ以上負担をかけたくないからね」
 優しい物腰に少し戸惑っていると、隊長はベリッと包帯を外した。
 女の顔に打撲跡は見たくもない光景である。しかもこの傷をつけたのがあのマティアスなのだ。隊長はどんな姿になっても隊長だが、その姿が女や子供であっても容赦がないようで、身が震えあがりそうになる。
 ラモンは知っている、道徳のない人がどれ程恐ろしい事が出来るのかを…
「ラモン?」
 名を呼ばれてはっとした。そして顔をあげると、打撲跡がほとんど見えなくなっていた。腫れがまだ少しあるから完璧に隠せたわけではないが、知らない人が見たらそこに傷があるとは夢にも思わないだろう。
 上手いもんだな、と褒めると、大学時代に演劇の裏方をやっていたからねと隊長は言った。
「……なぁ、隊長?」
「ん?」
「タナトスとカト…って知ってるか?」
 記憶が戻った時に聞いた名前である。マティアスはリアンダーの好敵手でもあったから名は知っていたが、他の2人は良く知らなかった。だから聞いたのだが、意外な事に隊長は曖昧な返事しかくれなかった。
「タナトスとカト……名前しか知らないわ…
 王女を奪取する為に結成されたグループのトップ1と2よ」
「え、マティアスがトップじゃないのかよ?」本気で驚くラモン。
「マティアスはリーダーに向かないからね」と笑う隊長。「タナトスとカトの事は、ニーシャ…あ、ネストルの事ね、の方が分かっていると思うから、彼女に会えたら聞いてみる方がいいかもね」
 『会ったら』と言わないところに、隊長なりの遠慮が感じられた。



 用事も済んだのでラモンが先に帰ろうとすると、隊長が名を呼ぶのが聞こえた。何だ?と言いたげに振り向いてみると隊長は真剣な顔で言った。
「デローリスをちゃんと見張ってなさい」
 驚きのあまり声を失っていたら、隊長は続けて言った。
「彼女は何も知らないから、知らぬうちに情報を漏らしてしまう可能性がある。あなたも彼女の事を大事に思うのなら、事情を話すか、あの人が口を滑らせないよう見ていた方が良いわよ」
 大事なら見張っておけと、何とも矛盾している言葉にカッとした。
「そんな事をしなくても、アイツは絶対に俺を裏切らない。アンタが言ったから許すが、他の人だったら殴るところだ!」
 そして、大股でその場を退散した。




 その場に取り残されたエイレは悲しそうな表情をしていた。そしてぼそっと言った。


「私も、マティアスは絶対裏切らないと思ってたんだけどね…」




↓あとがき

爆弾発言だよ隊長!第二三話です!!

敵の方で名前がもう1つ出ましたね。
マティアス、タナトス、に続いてカト!加藤ではないのでご注意を♪
(間違えないって、絶対)

ちなみに、すごい時間がかかってますが、エイレが拉致されてからまだ一週間位しかたっていません。もう数ヶ月にいるんじゃないかと感じるのは、私の執筆が遅いからです(涙)


ではでは、来週どうなるんでしょうかね?
少なくとも、エイレの最後の爆弾発言解決されないので!
(コラ!)


次週をお楽しみに…してみる?

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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

コメント
この記事へのコメント
楽しみ♪
楽しみにしてみます(^-^)
 
しかし、マティアスさんのイメージ、真面目な話の中では怖いイメージなんですが、ちょっと話から離れると「鼻眼鏡」が頭の中に…(^_^;)
2008/08/12(火) 17:16:16 | URL | うだジロー #-[ 編集]
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