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『スタジオ える あっと ブログ』 略して 『鼻眼鏡』!(ええええ?)
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第二二話 『ここからが勝負』
 あまり眠れなかった気がする。
 薄明るくなる部屋の天井を見上げながらエイレは思った。やはり、どこかで緊張が抜け切れていないのだと分かる。
 不意に腹の虫が鳴き、遅れて空腹感が襲ってきた。
 少々早いが、朝ごはんを食べようと起き上がることにした。


 シェルターは、言うならば、大学の時お世話になった寮と似ていた。2階から上がそれぞれの寝室とシャワー部屋となっていて、1階はキッチンとダイニング、リビングそしてランドリー。ちなみにエイレはデローリスと同じ3階の階段脇という騒々しい部屋を貰ったが、空きがあっただけでありがたいので文句は言わなかった。
 足音を立てないよう静かに階段を降りようとしても、造りは古いのでどうしてもギシギシ音を立ててしまう。それでも何とか1階に下りると、先客がいた。35歳位の女性で、長い髪で顔を覆い隠していた。
 静かに「Buenos Dias」と言うと、その人ははっとしたように手に持っていたコップを落としてしまった。幸いに、コップはプラスチック製だったし、中身がほとんど入ってなかったので大惨事は免れた。
「あ、あ、あな、た…だ、だ、だ、誰?」
 どもりながら言う女性はやつれていた。安心させるべく、エイレは優しく微笑みながら自己紹介をした。
「私はレオナ、デローリスに此処を紹介されて昨日来たばかりなの。脅かしてごめんなさい」
 それで女性の緊張は解けたようだった。
「い、良いのよ?わた…私たちは同じきょ、境遇なんで、すもの」
 どうやら女性のどもりは恐怖から来ていたものではないらしい。
 彼女はロサと名乗り、キッチンに何があるかひとしきり教えてもらってからまた黙って新しく入れたコーヒーを啜った。皆、何かしら不幸があって入って来たのだから、あえて何も聞かないのが美徳だろうとエイレは判断しそのまま黙っていた。
 すると、ガタンと何かが開き、そしてまた閉まる音がした。何だろうと考えつく前に、ロサは突然玄関の方へ走りだした。気になってキッチンの扉から顔だけ覗かせるとロサが床に落ちていた手紙を拾い上げ、何かを探すように宛名をじっと見ていた。
 だが、探していたものは見つからなかったらしく、安心とも落胆とも取れるため息を漏らした。彼女が顔をあげる前にエイレはキッチンに退却し、何も見ていなかった様にふるまった。
「手紙、き、来てた」
 入って来るなり、ロサはそう言って『レオナへ』と書かれた手紙を渡し、コーヒーカップを食器洗い機に詰め込んでから寝室に戻った。
 少し吃驚する行動だが、このシェルターにいる人たちは皆、何か問題を抱えているのだ。彼女には彼女なりの事情があるのだし、まだここのルールを把握していないのでとりあえずそっとしておくのが一番だろうとエイレは判断した。
 『レオナへ』と書かれた手紙の差出人は『Gene』となっていた。少し考えてから、ラモンからだと理解できた。『ラモン』はどう考えても男性の名前で、『彼氏の暴力から逃げてきたレオナ』に男からの手紙が来るのはおかしい。それに、『Gene』ジェネともジーンとも読めるうえ、男女の判断が出来ない。それでもエイレには一発で誰から来たのか分かるから、ラモンの判断は良い。
 早速手紙を開けてみると、お世辞でもキレイとは言い難い字で待ち合わせ場所と時間が書かれてあった。現時刻を確かめようとして左腕を持ち上げるが、エイレは傷ついただけ。
 母の大切な友人、そしてエイレの名付け親から貰った時計はマティアス等が持っているのだ。たかだか腕時計ではあるものの、エイレにしてみれば父親に一番近かった人から貰った大切な思い出の品なのだ。
 落ち込む気持ちを振り切り、エイレは壁にかかっている時計を見て自分の服を洗濯そして乾燥させる時間はあるなと判断し、3階にある部屋へそっと駆け上がった。








 ラ・アウロラ国際空港にアレックスは問題なく到着した。ヨーロッパ連合の一つであるドイツ出身だったため、ビザ無しでも国に入れたのはありがたかった。そのかわり、90日というタイムリミットがある。
 しかし、アレックスはエイレを見つけるのにそんなに時間がかかるとは思っていない。せいぜい2週間、時間がかかったとしても1ヶ月で彼女は見つかる確信があった。
 この考えこそが彼の持つ第6感の力なのだが、アレックスは未だにそれを信じていない。だが、自分の考えはどうでもいいのだとアレックスは開き直った。自分の勘が冴える時は、信じてくれる他人がいる時なのだ。ユリウスには隊長リアンダーがいた。そして、今の自分にはエイレがいる。
 彼女のためなら俺は――


 ピリリリリリリリリリリ


 突然携帯が鳴り、アレックスは慌てて出る。
「もしもし?」
『アレックス?こっちはデイビッド。今更だけど新しい携帯に買い替えるか、新しいSIMカードを買って』
 少し高めの声で言われれば誰だって困惑するだろうとアレックスは眉をひそめた。
「なんでまた?」
『いいから言うとおりにして、買い替えた後に教えるからさ。じゃ、君の方から電話待ってるよ!少々高くっても良いから、ちゃんとしたヤツ買うんだよ!』
 そして、かけ直すための番号を教えてもらい、デイビットからの電話は切れた。



 『ちゃんとした』携帯電話とはきっと、路上で安く売られている品には手を出すなという事なんだろうとアレックスは判断し、グアテマラシティの携帯大型店でちょっと欲しかった新型の携帯があったので、それを買った。
 特に理由も言わず買換えさせられたので、これぐらいは許されるよなと勝手な事を思った。早速かけ直す。
『もしもし?』
 ニーシャの声だった。
「アレックスだ。デイビットに携帯を買い換えろと言われたんだが、いったい何があったんだ?」
『何もないけど、用心にこした事はないからね……買い替えたというから、昔の携帯はまだあるって事ね?電源はまだ入っていたら今すぐ消して』
 ますます訳が分からなくなったが、とりあえず言うとおりに昔の携帯の電源を切る。そのことを伝えるとニーシャは『これで余計な心配はなくなるわね』と意味深な事を言う。
『考えてみれば当たり前のことなの』と、ニーシャは説明した。『こっちがエイレの携帯を追跡できるように、向こうも私たちの携帯を追跡できるでしょ?しかも、エイレの携帯には私たちの番号が入っているから、向こう側に私たちの居場所を一気に教える事となっちゃたのよ』
 アレックスは息を飲み込んだ。そうだ、確かにその通りなのだ、自分がスタントの仕事をした映画でも、そういうシーンがあったじゃないかと、自分に呆れてしまう。
『本当は今すぐにでも携帯を売って欲しいところなんだけど、登録してある電話番号があるでしょうし、それをすべて新しい方に移してから情報を違う内容で上書きをしてから消去して』
「何でまたその面倒臭い方法で消去するんだ?」
『これはデイビットからの話だけど、携帯もコンピューターみたいに消去した情報を復元させられるらしいの。本当に消したい情報は違う内容で上書きするのがベストなんだってさ』
 へぇと感心するアレックス。確かに面倒臭いが、相手はすでにエイレの個人情報を握っているのだ、それ以上情報が漏れられるのは勘弁したいのは確かだ。
「分かった、そうした後にすぐ携帯を売るさ」
『思ってたよりもあっさりね』
 心なしか、ニーシャは呆れているようだった。
「どうせプリペイドだ、損は無いだろ」
 そういう意味じゃないんだけどね、とニーシャは呟いたが、まぁいいか、と気を取り直して真剣な声で言った。


『とにかく、ここからが勝負よ。
 相手は何人いるか分からないが、マティアスは確実にいるんだから気をつけて。奴との衝突は何が何でも避ける事。私たちはまず、隊長を見つけ、そして王女を守るという使命があるんだから。
 私とデイビットも出来るだけ早く合流するから…無茶だけはしないでと忠告はするから』


 そう言いきってからニーシャは電話を切った。
 アレックスは苦笑した、ニーシャは分かっているようだと。ユリウスもアレックスも、隊長のためならばこの命を張ってしまう事に。





 だが、すぐに気を引き締める。彼女の言うとおり、ここからが勝負なのだから。




↓あとがき



ふぅ~、なんだかんだの第二二話!

……なんか、量が半端無くなってきています(汗)どのくらい続くのでしょうかね?
(↑作者のくせに!)


ここからが勝負とは言ったものの、明らかにアレックスがすごい不利です(苦笑)
とにかくエイレを、隊長を見つけ出したい一心なのでかなり無茶しそうです。猪突猛進型っぽいですしね、彼(爆)

とにかく、来週はラモンの話を少ししようかなっと思います!
次週を、楽しみにするか?藤原 紀香?(古っ!)

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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

コメント
この記事へのコメント
緊迫感♪
わぁ!
次にどうなるのか、ドキドキ・ハラハラしますねぇ~(^-^)

ついでに、前の分の読んでいなかった話をしっかり読みました♪
突っ込みたいところがけっこうあるけど、もう発表されて時間も経ってるし、もしも、コレをまとめて本にすることがあったら、そのとき突っ込むことにします(^_^;)
これから発表される分は、その都度、突っ込みますね(o^-')b
2008/08/05(火) 08:50:57 | URL | うだジロー #-[ 編集]
は、はいです!うだジローさん
つっこみ、何時でも受け付けます!
編集長!!
(編集長?!)

もう、かなりの長さになっているから、実際に同人誌としてまとめたいなぁ~って気はあります(笑)
もしそうなったら真っ先にうだジローさんに報告します!
ちゃんと編集長としてうだジローさんの名前も入れますね♪

*注意*
何時の話になるか分からないので、あまり気にしないでください(苦笑)
あ、でも、ホームページを立ち上げたらそっちに話を全部移そうとは思っているんですがね。
2008/10/19(日) 18:54:54 | URL | EL #-[ 編集]
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