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『スタジオ える あっと ブログ』 略して 『鼻眼鏡』!(ええええ?)
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第二一話 『最悪のタイミング』
 タイミングが、悪かった。それ以上に言える事は無い。


 もうこの王国は続かないだろうと、ネストルは密かに思っていた。周りの国々が連合を組み始めているのに、我が国王はそれに頑なに反発しているのだ。純粋に自分たちが一番なのだと主張したいからだが、もうその時代は終わってしまったのだ。
 1つの大王国より、いくつもの小国が組んだ方が利益が高い。そして、これは国王が見て見ぬふりを決め込んでいるが、海をこえた外部の大陸からの制圧に打ち勝つにも連合した方が有利なのだ。しかし、国王は自分が一番偉い、自分こそ選ばれた者なのだと信じ込んでいるので、海を越えて他の国があるなんて端から信じていないのだ。
 しかし、連合はどんどんでかくなり、王国内でも不信感が募り始めたせいか誇りだった軍事力も徐々に力を失い始めたのだ。ここまで思ってなお、ネストルがこの国から出ない理由は王女であるダーシャの存在ゆえである。
 彼女は賢明であり、しかも弟のように国王に毒されていないのだ。これからの時代、王国をいい方向に変えられるのは彼女しかいないと、ダーシャ王女を高くかっているのだ。しかし、国王がそれを許さない。何としても男である第2子の方を後継ぎにしたがっているのだが、それまでこの王国があるだろうか…




「…でありまして、もう一度考え直しては頂けないのでしょうか?」
 連合のトップが先程から同じ事を繰り返していた。それに国王は、同じ返事を返しているのだ。
 曰く、私たちには関係のない事だと。連合を組まなくても、私たちは一番なのだと。
 いつもの言い訳に呆れを通り越し、軽蔑を覚えるネストル。しかし、この場で一番かわいそうなのはダーシャ王女である。心労のせいで体調が優れないうえに、わがままとしか思えない父の言い分を聞くなんて。連合を組んだ方が良いのは分かっているのだが、父である国王に口出しをするのは絶対ならない事なのだ。
 ふと顔をあげてみると赤髪の青年が扉付近に立っていた。自分の若い友人でもある『赤獅子』リアンダーだ。彼もポーカーフェイスを装っているけど、国王が何かを言う度に眉をしかめている所から、国王の言葉を聞いてあまり快く思っていないのだろう。
「何度来ても答えは変わらないと言っている。早々と帰ってくれ!」
「ですから、今度こそ聞いてもらえませんと、この王国自体が標的になるんですよ?」
 『我が連合の』と言わないところが連合の本心が見える。
「王女様も、そうは思いませんか?」


 場の空気が凍った。


 ダーシャ王女はどんな時も発言を許されない。基本的に女性には発言権が無いのだが、彼女の場合それがさらに厳しいのである。
 そんな彼女に発言させようとする連合は、決してうっかりしていたからではない。国王の機嫌を損ねるため、わざとしたのだ。
 しかし、それが悲劇の始まりだった。
「わ、私は……」
「黙れ!お前の考えなど誰も聞きたくないわ!」
「いいえ!」と連合から声が上がる「ここは是非とも、第1子であるダーシャ様から考えを聞きたいのです。貴女様の目から見て、この国は果たして未来があるのでしょうか?」
 さらに顔を白くするダーシャ王女だが、それに構わず討論を始める国王と連合。


「だまれ!我が息子のためにも、この国を決してつぶす気などないのだと聞いていないのか?」
「国王様が方針を変えなければ、この国自体が無くなると何故わからないのですか?ほら、王女様も何とか言ってください」
「だからソイツに意見を聞くのはやめろと言っている!政治に女を出そうとするなど、いったい何を考えているのやら…」
 鼻を鳴らす国王に、連合はいかにも意外そうに言った。
「何を言いますか、今の時代、女性にだって政治に口出す権利は十二分にありますよ?
 しかも聞くところ、ダーシャ王女は賢明でいらっしゃる。それならば、ぜひとも彼女の意見を聞いてみたいのです、国王様の子として」
 フン、と馬鹿にしたような様子で、国王はついに言ってはいけない事を言ってしまう。


「そこの女は別に娘だと思ってなどいない、意見が欲しいのならそのままソイツを持っていっても構わないぞ?」



 頭で分かってはいても、言葉として聞くのとは重みが違う。白くなっていたダーシャ王女の顔は真っ青になり、息がしにくくなっているのか胸もとを抑えうずくまる。その姿にネストルも思わず国王を咎めようとしたが、それが出来る前にソレが起こった。







 最初は風が吹いたのかと思った。でも、ここは室内だ、そんな事は有り得ないと思ったらダーシャ王女の悲痛な叫びと共に、そこら一帯の人の体が吹っ飛んだ。
 ある者は床に叩きつけられ、またある者は壁に激突した。ネストルも尻もちをつき、いったい何なのかが分かるまえに第2波が襲った。
 見えない何かが、波のように何度も何度も襲ってくる。ソレ自体はさほど痛くはないが、強風に煽られたようにまともに目を開ける事も、立つ事も出来ない。
 それでも頑張って壁を掴んで体勢を整えると、どうやらその衝撃波の中心にはダーシャ王女がいるようだ。体を抱きしめ、嗚咽を漏らし、体の内から来る痛みに耐えられないと泣き叫んでいた。



「やだ…いやっ!

 ――ああああ、痛い…いたいよぉ!」




 彼女が声をあげる度に衝撃波が来るので、落ち着かせようと近くに寄りたくても出来ないのだ。
 悔しくて、情けなくて、ネストルが唇を噛みしめていると、王女の名前を叫ぶ声がした。



「ダーシャ!俺の声を聞け、ダーシャ!」



 嗚咽を漏らしながら、歪んだ顔でダーシャ王女は顔をあげる。
 そこには『赤獅子』が仁王立ちで衝撃に耐え、髪を撒き散らし吼えていた。



「俺の声を聞け、ダーシャ!お前はこれでいいのか?このままでいいのか?自分の夢を現実にさせたいと言った言葉は嘘なのか?違うだろ!

 お前はそれよりも強い筈だ。こんな事で諦めるのか?


 だったら甘えるな!


 自分の力で帰って来い、ダーシャ!」





 その時の様子を、ネストルは忘れなかった。
 『赤獅子』の呼びかけにダーシャ王女は応え、衝撃波が止んだ。それと同時に彼女は気を失い、リアンダーもその場に体が崩れた。
 他の兵士がリアンダーを助け起こすので、ネストルは王女を介抱する事に専念した。そして、その時ネストルは血の凍る思いをする。



 連合から来た、顔を覆い隠していた人の顔を見てしまったのだ。
 焼けただれた肌を、ネストルは見た事はある。それだけで顔をしかめたくなるものだが、この男の顔と比べたらどうってことないように感じた。


 男の右顔半分は焼けただれていた、いや、死んでいた。

 右顔半分が死んでいるのに、その両目は危険な光を放っていた。





 その男の名前をネストルは後で知ることになる……














「タナトス……マティアスが来ているなら、彼も来ているはずね」
 ニーシャはパスポート申請所でデイビットにそう囁いた。
「タナトス…通称『死神』ですね……
 なんか、偶然にしては似合いすぎる名前ですよね?」
 『タナトス』はギリシャ神話で死の神の名前だという事をデイビットは指しているのだ。それに無言で頷くニーシャ。


 冷徹な判断、そして非情としか思えない言葉に死んだ右半分の顔。
 その3つが揃い、男は『死神』タナトスと呼ばれた。



 その『死神』が来ていると推測したニーシャは、残念な事に当っているのだった。




↓あとがき



昔の事情がやっとでました第二一話!!

ダーシャ王女の力って、まぁ言うならば超能力みたいなモノですね。安易とかって言わないでください(涙)
だって、だって!
『バルドの向こう側』はもともと私の本当に見たことのある夢から発案したものだもん!
(理由にはなってないな)

今回は少し前にちょろっと出たタナトスという人がまた出ましたね♪
彼は近いうちにちゃんと出します。


『右顔半分が死んでいる』という設定は、実は絵を描くにはとても面倒なんだと、後から気がつきました(泣)


まぁ、それはともかく、今回は過去話が多かったですが、次回はまた現代に戻ります!
レオナことエイレはこれからどうするんでしょうか!

次週も、読んでくれたらうれしいな!
(↑弱気かよ!)


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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

コメント
この記事へのコメント
読みますよ~!
楽しみにしてますし、応援してますよ~♪
2008/07/29(火) 10:26:10 | URL | うだジロー #-[ 編集]
ありがとうございます、うだジローさん♪
バルドの向こう側、なんだかすごい量になってきました(汗)
本当はもっと書きたい/描きたいモノがあるのですが、ブログだけではちょっと載せるのが難しいので、何とかホームページを再開させたいです!

いつ出来上がるか、分からないですけどね(泣)
2008/08/01(金) 02:43:01 | URL | EL #-[ 編集]
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