ダンッ!!
と、扉が閉まるのを聞き、デイビットはひとまず2人の言い争いが終わった事に胸をなでおろした。
隊長のエイレが消えてから3日。ニーシャは心配のしすぎで神経質になり始め、アレックスが「悪い予感がしてたんだ」と余計な事を言ってしまい、それが彼女の逆鱗に触れてしまったのだ。それからというもの、何かがあるごとに2人は言い争いをおこしている。
昔だったら、とデイビットは思う、ユリウスはネストルに絶対口答えなどしなかったのに…
まぁ、ネストルも今のニーシャのように取り乱すほど心配はしなかったのかもしれないが、そもそも状況が違うので言いきれる訳ではない。
ドスっ、とニーシャはベッドに倒れ込んだ。彼女とアレックスが言い争い始めるとこの空き部屋(エイレが使っていた部屋でもある)に避難するデイビットだが、言い争いが終わればこの空き部屋はニーシャの懺悔場となる。
本当はアレックスの事を責めてなんかいない、と。
彼は悪くないんだし、自分を責めても意味がない、と。
それなのに彼に八つ当たりなんかして酷いわ、と。
デイビットは彼女の言い分を一つ一つきちんと聞き、みんな心配なんだよ仕方がないよとありきたりな慰め言葉をかける。
「……それに、ユリウスの第六感っていっちゃえば隊長しか信じていなかったからね」
そうやってニーシャはため息をつく。
昔を思い返してみれば、ユリウスは勘が良いと皆は思ったものの、その第六感が超自然現象ほどと信じていたのは隊長だけだった。ユリウス自身、自分にそんな力があるとはいまいち信じてなかったのではないだろうか?でも、隊長が信じてくれるのなら、とユリウスはその考えを口にする事はなかった。
「仕方ないよ、隊長自身が曖昧な表現しかしなかったんだし…」
「でも、私は別段彼の第六感を信じている訳じゃないのに、何で今その力を発揮できないのって責めちゃったし…」
枕に顔を埋めてしまうニーシャ。
今度ばかりは慰め言葉をかけられないデイビット。
ニーシャの懺悔が終わったところで、デイビットはリビングに足を運んだ。エイレと連絡が取れないと判明した以来、アレックスのアパートが3人の拠点となった。デイビットが初めて訪れた時はかなり片付いていたのに、今は綺麗にする人がいない、いや、人はいても綺麗にしないのでなかり無残な状態になってしまっている。
そして、それは今のアレックスにも言える事だろう。
いつもはあげている前髪が垂れてきて、顔にはうっすら不精鬚が生えてきている。目のクマも酷く、まるでヤク中のようだとデイビットは心が痛んだ。隊長とメールでやり取りしている時に、彼女が嬉々として今のアレックスは凄いんだと、良い男になっていると書いていたので、彼がこんなになってしまうのは見ていられなかった。
「…アレックス」
ソファに前かがみになっている彼に声をかけてみるが、返事はなかった。いつもの事なのでデイビットは気にせず言葉を続けた。
ここで、アレックスのせいじゃない、と言っても彼が自分のせいだと考えを譲らないのでそれだけは絶対言わないようした。
「その、第六感ってやつさ…どんな感じなの?」
質問の意味が分からない、と顔をあげたアレックスはそう言いたげだった。
「いや、だからね?どういう時に、どんな事が分かるのかなぁ〜と思って……隊長が信頼するほどなんだし」
『隊長』という言葉に過敏に反応してしまうアレックスを少し可哀そうだと思うが、これは知りたかった事だし、いい加減にシャキッとしてくれないと何も始まらない事をデイビットは分かってた。
アレックスは言葉を探すような素振りをして見せ、たどたどしく話し始めた。
「…何時だなんて分からない……が、戦闘中だったり、今だったらスタントの仕事中でいきなりひやっとした感覚が来るんだ。で、それの来た方向から逃れようとすると……例えば剣の切っ先から逃れたり、大怪我をしてしまう筈だったのに軽傷ですんだり……
でも、時々……イメージを感じる時があるんだ」
デイビットは目を見開く。
「イメージを感じる?見えるんじゃなくって?」
「感じるんだ」と首を横に振りながら言うアレックス。「最初に記憶が戻った時…隊長は日本にいるんだってイメージが、こう、感じられたんだ」
成程と口に出しては言ってみるものの、いまいち良く分かっていないデイビット。しかし、その第六感とやらを持っているアレックスがこんな調子だと、隊長の説明が曖昧なのも仕方がないのかもしれない。
「……つまりはさ、その第六感って自分からは、まぁなんて言うか…発動させる事は出来ないの?」
「やろうとしてるんだ!ずっと!!」
突然大声をあげるアレックス。でも、と彼は泣きそうな表情になり、出来ないんだと声を絞り出した。
4日目が過ぎ、5日目の朝また2人の言い争いが起こりそうになった時、ついにデイビットが切れた。
「いい加減にしなさい!」とちょっと高めの声で叫んだ。「解決されないケンカをする暇があるのなら、まずはこのリビングを綺麗にする!…理由を教えて欲しいならきびきびと働く!さぁ!!」
デイビットの突然と爆発に怯えはしなかったが、呆気にとらわれてしまうニーシャとアレックス。2人がしばらく動かないでいるともう一度デイビットが喝を入れ、慌てて部屋を片付け始める。
「いやぁ〜…サンディが切れた時を思い出したなぁ」
「サンディが切れた事があるのか?」
ニーシャの独り言に小声で聞くアレックス。
「ネストルの前じゃ結構あったわ…まぁ、あれは誘発させた私が悪いのかもしれないけど」
なんとか見苦しくない状態にリビングが片付かされ、デイビットは何事もなかった様にケロッとしていた。信じられない事にみんなの分のコーヒーまで作っていた。
「では、作戦を発表します」
デイビットのいきなりの『作戦』という言葉に、2人は顔を見合わせた。
「何よ、作戦って?」
「隊長を見つけよう大作戦!ちょっと法に触れても黙っててねvだ」
語尾にハートマークが見えたような気がしたアレックスだが、余計な事は言わない事にした。
「アレックスの第六感が調子が悪い今」びくっと反応するアレックス「隊長の居場所を探すには現代科学を使用するしかないと思ってね…どのコンピューターにでも使える、携帯を追跡できるプログラムを作ってもらったんだ」
「作ってもらった?!」
「何時、誰に?!」
「そこはあんまりつっこまないで欲しいな」と手をひらひらさせるデイビット「ちゃんとした会社だけど、私用目的だからちょっと手がかかったけどね」
ニーシャは申訳ない顔を見せた。つまり、お金がかかったんだと簡単に想像できたからだ。
そんなニーシャの心配を読み取ってか、デイビットはどうって事ないよと笑顔で言った。
「いや、どうって事はないだろ?……お前だって限りある資金しかないのに」
ああ〜、と頭をかくデイビット。
「大丈夫だと思うけどなぁ〜」と、彼の貯金の額を言った。
ショックから立ち直ったニーシャは、そんな数は夢にも見た事がないと震えた声で言った。
「いやぁ〜、何か知らないけど株で稼いだお金を使わないで貯金してたらあんな数になっちゃってね?なんでか使っちゃダメだと思ってたら、記憶が戻った時の為だったね」
と彼はあっけらかんと言った。
この瞬間、デイビットの位置がかなり重要になった事は言うまでもないだろう。
昼をちょっとすぎると例のプログラムが送られてきた。急いでアレックスのコンピューターにインストールし、エイレの携帯の番号を入力した。
「エイレの携帯の電源が切れていたらどうするのよ?」
「それなら、最後どこにいたか追跡できるから大丈夫だよ」
でも、ちょっと時間がかかりそうだね、とデイビットが言うと無機質な音楽がリビングに響き渡った。
はっと振り返ると、ニーシャの携帯が震えていた。彼女は急いで携帯を手にするとかけてきた番号を確認して、心底驚いた。
「エイレからだ…」
その言葉に残りの2人が息をのんだ。
「もしもし、エイレ?!」とニーシャは勢いづいて携帯の受話装置に話しかけた。
しかし、電話の向こう側から聞こえたのは、エイレの女の声ではなく、男の低く強さが感じられる声だった。
「軍師様……ネストルだな?」
ニーシャはこれが悪い夢なら覚めて欲しいと、切実に思った。
↓あとがき
はい、
第十四話お送りしました!!(パフパフパフゥ〜)←さくら
省略しましたが、アレックスとニーシャの言い争いは同じところをぐるぐる回ってるだけで、解決がちょっともされないものだと想像していただければ幸いです(苦笑)
そして明かされたデイビットの
凄い貯金!日本円にして「兆」の位は軽くいってます。王女親衛隊、
スポンサーが見つかりました!(爆)
さて、最後は電話で終わったのですが相手はもちろんあの人です。
シリアスだからはな眼鏡は着けてないけど(笑)
ではでは、次回をお楽しみに!!
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