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『スタジオ える あっと ブログ』 略して 『鼻眼鏡』!(ええええ?)
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第三三話 『再会して』
 皆と会う前に彼女を送りたいと隊長が言うので、素直に従ったデイビット。車はエイレと再会(デイビットとは初合わせだったが)した時すでに手配してあったし、隊長の命令は絶対だ。
 まぁ、これはどちらかと言うと願いの方だったが。


 デイビットがサンディだった頃、隊長は22歳と今のエイレと同い年だった。その頃は『王女親衛隊隊長』なんて肩書はまだなく、『赤獅子リアンダー』の二つ名で知られ、ネストルが自分の友人として紹介してくれた。
 あの頃のリアンダーは年相応の明るい表情をたくさん見せていた。楽しければ笑い、辛い事があれば不機嫌になり、からかわられれば拗ねた顔をする。そして「隊長」と呼ばれるようになり、彼はそれに伴う威厳と落ち着きを身に付ける。それは成長する事においてきわめて自然な事だし、サンディはそれを変だとは思わなかった。


 今の隊長、エイレからは不思議な事にリアンダーの最後の頃の雰囲気を感じる。しかし、それも当たり前かなとデイビットはハンドルを握りながら思った。
 現代の姿で過ごしてきた年齢に付けくわえ、前世の頃の年齢分の記憶を持っているのだ。つまりデイビットだったら、およそ60年分の記憶を持っている事になる。しかも一気に記憶がよみがえったから、多少性格が年相応に感じられなくても仕方がない。
 デイビットもサンディの記憶が戻った時、変な話ではあるが、やっと『大人』になった気がしたものだ。
 だから今のエイレの雰囲気を特に変とは思っていなかった。
「彼女は誰だったんですか?」と昔と同じように話しかける。「いろいろ話されていたみたいですけど…」
 エイレは助手席で目をつむったまま答えた。
「デローリスと言って、いろいろと面倒を見てくれた人。ラモン、今のジェネの名前、の恋人だったけど、勘違いが重なって仲が破局させてしまったの」
 はぁ、とデイビットは曖昧な相槌を打った。
「…最後に何かを貰ってましたけど、なんです?」
「彼女の連絡先。
 ……彼女もラモンも、何が一番つらいのかって、いまだにお互いの事を憎からず思っている事なんだと思うの。いろんな勘違いが重なって2人の仲がこじれてしまったけど、その内また逢いたいと思う日が来るかもしれない…これが、私が出来る最低の償い」
 私が現れなければ2人はまだ一緒に居られたのにね。
 淡々とした口調で言っているものだから、デイビットは果たしてどう声をかければ良いか分からなかった。まぁ、もとよりこういう話題はあまり得意ではなかったが。
「…この事は、ラモンには秘密ね?」
 そう言ってエイレは笑ったつもりだったのだろうか。デイビットには隊長の表情から何も読めずにいた。








 唯一ジェネより背の低かったサンディが、今一番背が高いのは詐欺だとラモンは口にした。
「再会の第一声がそれかよ」とデイビットは苦笑した。
 他の3人と合流するなり、ニーシャはエイレに飛びついた。バスターミナルで再会した時もいっぱい抱きしめていたのに、それでも足りないと言うばかりに彼女を離さない。ネストルはリアンダーをすごく気に入っていたのは知っていたが、性が変われば表現方法も変わるものみたいだ。
 ちょっと懸念していたエイレとラモンだったが、目が合うなりラモンは恥ずかしそうに頭をかいてから肩をあげて笑った。それを見てエイレは驚いた顔をしたが、すぐに元の微笑んだ表情に戻った。
 良かったとデイビットが胸をなで下ろすも、ふとアレックスの顔を見て眉をひそめた。


 笑ってない。


 隊長の安否を一番心配していたのに、アレックスは何が気がかりなのか、納得できないと表情が物語っていた。
 まぁ、元からあまり笑顔を見せないアレックスではあるが、再会の喜びくらいはあってもいいような気がした。
 そして何より、皆からとの距離が遠かった。まるで、他の人達の再会を観察するがごとく、少し離れた場所に立っているのだ。
 変だなと心の中で首を捻るも、ニーシャに今夜泊まるところを確保してと言われたので、すぐさまそっちの使命に取り掛かった。なので、アレックスの妙なところはすぐに頭から消えてしまった。












「やっぱり、タナトスが来てるのね…」
 ホテルに向かう途中、エイレとラモンが確保した情報をぽつぽつ話し出した。そして敵の人数、そして名前を話すなりニーシャはため息をついた。
「タナトスって『死神』の事だよな?俺も隊長も良くは知らないんだが、どんな奴なんだ?」
 ラモンの質問にニーシャは顔を歪めて、気味の悪いヤツよ、と言った。
「実際に話した事は1度しかなかったけど、その時分かったのは彼は見た目を然る事ながら、その言動が人間離れしていることね…喜怒哀楽っていうか、何か人間として根本的に欠けている感じだった……
 国王と交渉していた時、彼が何かを言うごとに部屋の空気が寒くなっていったわ…もう、あれは交渉と名ばかりの脅しだったわね」
「そんなヤバい相手なの?」と聞くのはデイビット。
 そうね、とニーシャは少し考えた。
「敵には結局何人いるって?」
「20人」とエイレは答えた「でも更に仲間を増やしているみたい」
「で、実際名前が出てるのは『タナトス』『カト』『マティアス』…そしてあんた達(アレックスとラモンを指しながら)が対峙した『アリスタウス』って人。
 その中で言うと1、2を争うヤバさね」
「誰と争ってるんだ?」
「もちろん、『黒豹』マティアスよ。まぁ、ヤバさの方向性が正反対だから順位が付けられないだけなんだけどね」
 ふーんと思いながらも、あまり実感がわかないラモン。その2人に会った事もないので、どんなヤバさなのが想像すらできない。
「一応あの中では『タナトス』がリーダーって事になってるけど、もともと連合がそれぞれから人を出し合って結成されているから、実際には3つくらいに分かれているけどね」


 ニーシャの話によると、敵に20人くらいいても『タナトス派』『カト派』『マティアス派』に分かれているのだという。ダーシャ王女の力が発覚し、それを奪い去ろうと連合の各国々が協力して結成されたグループだが、我こそが先にとグループ内で分かれてしまうのも仕方がない。
 だから純粋な人数では敵の方が王女親衛隊より勝っていても、それぞれの派閥が協力する事はあまり無いので、心配は不要らしい。


「しかし」とニーシャは腕を組んだ。「敵さんの姿が全く変わってないのは予想外ね」
 それは相手も同じ、とエイレが言った。
「私達がここまで姿が変わるなんて思ってもいなかった…だから彼らでは王女は絶対に探し出せないって気づいた」
 どういう事だ?と聞きたそうな表情にエイレはゆっくりと話した。

「見た目が変わっても、私達はお互いの事が分かった。それは私達がお互いの事を認識していたから。
 もし、どちらか1人でも昔の頃の相手を認識していなかったら、今になっても気づかないまま……実際、マティアスの部下に『赤獅子』の事を知っていても、リアンダーの方が相手を知らなかったので長い間彼らは私が誰なのか分かっていなかった…
 今ニーシャの話を聞いてて気がついた。彼等が姿が変わってないのは、そうありたいから、ではなく、必要性でそのままなのだと。3つも派閥があったら、全員が全員の事を認識しているとも限らないから…
 そして王女は敵の方を全く知らないので、見た目を頼りに探し出せないという訳」

 あ、と突然デイビットが声を上げた。
「だったら、このまま王女を探さない方が良いじゃん!
 だって敵は王女を見つけ出せないのなら、それにこした事はないじゃない?」
 良いアイデアだとデイビットは思ったが、隊長はそれを否定する。

「第一に、王女は昔の姿のままじゃないと断言はできない。
 第二に、そしてこっちの方が大切なんだけど、王女にはあの力が宿っている。何も知らないまま、またあの力が解き放たれたら…そして、周りに誰も彼女を救う人がいなかったら…


 それだけは、絶対にあってはならない」




 そう言ったエイレの目は、『赤獅子』のように光っていた。





↓あとがき

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