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『スタジオ える あっと ブログ』 略して 『鼻眼鏡』!(ええええ?)
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第二五話 『1%の嘘』
「…名前は知りませんが、その子に似ている人なら見かけました」
 デローリスの言葉に、男は片眉をあげた。
「1週間ほど前、ここに食べに来たのを覚えています。あそこの席に座られていました」
 指差した席を男が一瞥した。
「良く、覚えているな?」
「あんな若い子がここに一人で来るの珍しいし、頬に痣ができてたんで目についたんです……その子が何か?」


 良い嘘というのは、99%の真実に1%だけの嘘を紛れ込ませるものだとラモンに教えられた。デローリス自身、少々面倒くさい事態に巻き込まれた時その方法を使い、全く疑われずに済んだので良い方法だと認識している。
 今目の前にいる男、長身で筋肉質の30代半ば、黒髪、そして強面のハンサム。こいつがラモンの言っていたレオナの「元彼」なんだろう…想像していたよりも色男で吃驚したが。
 ラモンには見かけたらすぐ逃げろとは言われたものの、この状況で逃げる方がおかしい。シェルターの事自体が秘密なので、それ以外は素直に言えばこれ以上関わらないのではないかと、デローリスは考えた。


「いやな?」と男は写真を懐にしまいながら言った。「ちょっと事件に巻き込まれていてな、有力な情報を握っているんだ」
 事件、とデローリスが復唱すると男は「ああ」と頷いた。
「で、見かけたというが話はしなかったのか?どっから来たとか、どこへ行くとか」
「……少し、話はしました。でも、他人の事情に首を突っ込む余裕は私にないですし、軽い世間話程度でした。どこへ行ったかなんて、全く見当もつきません」
 そうか、と男は少し考え込んだ。
 デローリスはというと、何とかへたり込まない様に頑張っているが、そろそろ限界が近付いてきた。男はなぜか話す時、いちいち顔を近づけてくるのだ。そのため呟くような低い声が耳をくすぐり、睦言のようだと変な意識をしてしまう。
「もしも」と男はいきなりカードを取り出して言った「この女の事で何か思い出したらいつでも電話してくれ」
 もう首を縦に振るのが限界のデローリスであった。




 マティアスはレストランを出ると、近くに待機していた部下が近くまで寄って来た。
「どうでしたか?」
「『赤獅子』が居た事は確かだな…ウエイトレスは見かけたが、それ以上は何も知らないんだとさ」
 懐から今度は煙草を取り出して、火をつけ一度大きく吸い込んだ。
「だが、なんか臭いな」
「何がですか?」
 あの女、とマティアスは言った。
「妙に早口で、俺の質問に前もって身構えているようだった…
 嘘をついて何のメリットがあるか分からないが、何かを隠していそうだから2人あのウエイトレスをつけさせろ」
 は!と部下は返事をした。
「マティアス様はどうなさるのですか?」
 ああ、とマティアスはダルそうに言った。今横にいる部下はどちらかというと優秀な方なので、気兼ねなく愚痴を言える。
「俺にしてみれば、このまま逃がしてもいいんだけどな?ただタナトスが『「赤獅子」と話がしたい』と言ってきかないんだ。向こうも王女を見つけてないし、このまま泳がせた方が良いと俺は言ったんだけどなぁ…
 まぁ、そんな訳でいたらいたで捕まえる。それでいい」
 俺は他の奴らを連れて違う町に行く、と付け加えた。
「では、マティアス様が良いと言うまで現状報告を続けます」
 生真面目にいう部下に、マティアスはクツクツと笑った。優秀な部下は嫌いじゃないぞ?と顔を近づけて言うマティアスだが、いろいろと困るのでやめて欲しいと部下は思った。







 『エイレミサキ』
 あの男はレオナの事を確かにそう呼んでいた。まぁ、状況が状況だし偽名を使っている事は珍しい事でもないし気にはしない。しかし、そうなると問題なのがラモンの反応。
 彼はレオナの親戚だ。例えどんなに遠い親戚でも顔を覚えていれば名
前も知っているはずだ。少なくても『レオナ』と『エイレミサキ』は間違えるはずはない。
 まぁ…確かにラモンはとっさの出来事に対応するのはうまいから、ただそれだけの事かも知れない……でも、もし違っていたら?
 その疑問がデローリスの頭に午前中ずっと付きまとっていた。

 一度湧いてしまった疑心は、なかなか消える事はないのだ。

 居ても立っていられず、店長の目を盗んでラモンに電話をかけてみるもののなかなか繋がらない。徐々に怒りが蓄積され、やっと繋がった時にはおもいっきし怒鳴りつけていた。
「今までどこに行ってたのよ?こっちは何度も電話してるのよ、何で出てくれなかったの?」
『ちょ、まて、何があった?』
「何があった?じゃないわよ!あの子の元彼が来たの、彼女を探しに」
『え、マジかそれ?』
 自分の怒りの理由より、レオナの事に興味を示したのに頭に来たデローリス。
「ええそうよ!あの子を探しに来たのよ、『エイレミサキ』をね!」
『え?エイ、なんだって?』
 ラモンの驚きように、かえって笑いが出てきたデローリス。

「やっぱり…思った通りじゃない……
 レオナなんて、そんな偽名…しかも事件に巻き込まれているなんて。
 親戚でもないくせに、何でそんなウソをつくの?あの子とはどういう関係なのよ?『ジーン』も…なんであんたも偽名を使ってあの子と連絡を取り合っているのよ?


 なんで、私に何も言ってくれないの?」





 思わず泣き出すデローリスに、ラモンはしばらく無言だった。
『……デローリス、一つだけ教えてくれ。お前はあの男に何も言ってないよな?』
「言わないわよ!…馬鹿にしないで」
『してないさ……俺は、お前を信用しているからな』
 今更と吐き捨てたいデローリスだが、その前にラモンが話を続けた。
『あの男、レオナの元彼はどんな手を使ってもアイツを探し出そうとするんだ…だからあの男の言葉に耳を傾けず、信じるな。
 …確かに、俺は本当の事を全部言ってなかった。最後まで言わせてくれ!言ってなかったけど、それはお前をこれ以上巻き込みたくないからなんだ。だから、もうちょっと待ってくれ。
 終わったら、ちゃんと説明するから……な?』




 デローリスはその後なんて返事をしたか覚えていなかった。たぶん、うん、とか、分った、とか何のひねりもない言葉を言ったんだろう。でも、デローリスの心は全然スッキリなどしていなかった。
 ラモンの話と、レオナの元彼の話はあまりにも食い違いすぎていた。そのため、何が本当で何が嘘か、全く分からない。


 本当に、嘘は1%だけなの?





↓あとがき

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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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