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『スタジオ える あっと ブログ』 略して 『鼻眼鏡』!(ええええ?)
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第七話 『男女の違い』
 艶かしいと、そう表現するほか無かった。
 小さいステージにはポールが一本と小道具はそれだけ。その周りを時には早く、時には遅く回り、その人は踊っていた。とにかく身体の見せ方が上手い。腰を振り客にそちらを注目させといて、引っ込めたとたん振り向き、叱咤すると共に誘惑するような目で惑わせる。
 ポール・ダンシングは見た目より難しいと、アレックスはどこかで聞いたことあったが、見た目だけではそうは思えない。あの小さい体から繰り広がれる数々の技を、辛そうな表情を見せずにやってのけるのだから。
 アレックスだって健康な成人男性である。ストリッパーの踊りを楽しまないはずは無いのだが、今回は勝手が違った。


 アレックスは今踊っている女性を知っている。
 いや、厳密には彼女の昔の姿を知っているのだ。だからこそ居た堪れないのだ。



 気分としては、祖母の下着姿を見せられるのも当然である。






 ネストルは手厳しく気難しい人、としてユリウスは認識している。隊長と一緒の時は楽しそうに雑談するのに、他人(ユリウスも含む)には常に怒った様な表情しか見せない。
 だからこそ、ネストルに呼ばれたと聞かされた時、何を怒られるのかと身構えたのだ。
「…あの、僕に話があると聞きましたが」
 緊張のあまり小声で問いかけるユリウス。そんな彼をネストルはメガネの上から眺めた。
「ああ」とメガネを外す姿に息を飲むユリウス。
「しばらく間、リアンダーがいないのでお前が指揮を取れ」
 …………………
「は?」
 聞き返すとネストルは一字一句全て言い直した。だからと言ってユリウスが納得する訳でもなく、猛反対した。
 なぜ隊長がいないのか、何で自分が指揮をするのか、なぜそれを隊長が教えてくれなかったのか。
「第一、隊長がいない時に指揮をすべきなのは僕ではなくて貴方様ではないですか?」
 捲くし立てるとネストルはきっぱり、めんどいからヤダ、と言った。
 冷や汗を流すユリウスに軍師は説明した。
「お前さんの敬愛している隊長は戦争に借り出されたんだ……そう睨むな、俺にはどうする事も出来ないぞ?突然の事だったんだ、俺だって偶然その場に居たおかげで知っているに過ぎない。
 まぁ、そこでリアンダーの後任者であるお前さんが指揮してみるのも良いんじゃないかと思ってな」
 ユリウスは目を見開いた。

 今、彼はなんと言った?

「僕が、後任者?」
 頷くネストは続けて、お子ちゃまには荷が重いけどな、と余計な一言を付け加えた。
「どうせ何時かはお前さんが隊長になるんだから、今のうちに練習してもおかしくないだろう?」
 そう提案するネストルは、けっしてユリウスをバカにしている訳ではなかった。

 つまり、ユリウスも多少はネストルに評価されている事なのだろう。しかし同時に、ネストルは暗にリアンダーは何時かいなくなってしまう事をユリウスに釘を打っているようでもあった。








 彼女のストリップ・ショーが大詰めに入る前に、アレックスはトイレへと避難した。公衆トイレの独特の臭いは嫌いだが、わがままを言える立場ではない。
 ……実際にこれ言ったら彼女に怒られそうだ。
 とにかく、これからが問題である。アレックスは『今のネストル』を確認は出来たものの、彼女は果たして彼を確認したのか?舞台以外の所は薄暗く、観客に誰がいるかなんて見えないだろうと思われる。
 まぁ、無難にショーが終わった後に声をかければ良いのかも知れないが、周りに要らぬ誤解を受けてしまう。ただでさえ、アレックスには『彼はゲイ』だったり『実はED』だなんて噂されているのだ。これ以上増えてエイレの耳にでも入ったら穴を掘って永久冬眠したくなるだろう。
「…いや、別に隊長限定ではないが」
 一人つっこみをしてしまうアレックス。

 まぁ、ここは男らしく正々堂々と声をかければ良いんだ、と何とか納得させてからトイレから出ると彼女のショーは終わっていた。
 ヤバい、とアレックスは焦った。
 どうしよう、と戸惑っていたら突然、体格の良いバウンサーが近付いてきた。思わず身構えていると、彼は何かをアレックスに突き出した。




「それがこの待ち合わせ場所が書いてある手紙だったの?」
 アウトドア・カフェでアイスティーの氷をかき回しながらエイレは聞いた。アレックスは頷き、ダイエット・コーラの残りを飲み干した。
 先ほどから彼の飲むスピードが速くなっているのをエイレは見抜いていた。女性に自分がストリップ劇場に行っていたなど、本来ならあまり言いたくないものなのだろう。しかし、エイレは元々彼の上司であり男性でもあった。別に恥ずかしがらなくても良いのではないかと思うが、そこは譲れない何かがあるのかも知れない。
 エイレの母は冗談で彼女がなぜ男と付き合えないのかは、男はつまらないこだわりを持っているから、とよく言っていた。
 それに、昔はどうあれ今の二人は20年以上『リアンダー』や『ユリウス』ではない全く別人の人生を歩んできたのだ。その時に作られた価値観や考え方は記憶が戻ったからって消えるものではない。
 だから相手が誰であれ、女性に「昨夜ストリップ劇場に行ったんだ」なんて言いたくないのも仕方のない事かも知れない。
「それで?」アレックスに聞いた「今のネストルはどんな感じなの?」
「…後方注意」
 え?と聞く前に、いきなり後ろから細くも色黒い腕が彼女を抱いた。
「も~う、一発で分かっちゃったわよ!
 ユリウス!あんた何隊長を独り占めしてるのよ!!」
「え~?!」
 いきなり理不尽な言いがかりをつけられるアレックスとは反対に、エイレは軽く困惑していた。
 『今のネストル』は女性だと分かっていた。分かっていたのだが、いざその声を聞くと、その腕の細さを見ると、背に当たる柔らかい感触を認識すると、やっぱり吃驚してしまう。
 恐る恐る振り返ってみると、そこには綺麗な女性が立っていた。
 アフリカ系アメリカ人特有の太い唇と巻き毛、そしてモカと形容される肌色。まつ毛が長く、きちんと手入れしてあるのが伺える。
 とたんにエイレは女性として恥ずかしくなった。やっぱり、もっとお洒落に気を使った方が良いのだと、切実に感じた。


「それにしても、隊長ったら可愛くなっちゃってv
 まぁ、昔も可愛いっちゃ可愛かったわよね?」
 初耳である。
「あの、ごめん……なんかショックが大きいってゆうか、『ネストル』って違和感が凄くあるから自己紹介していいかな?」
 私はエイレそしてこちらがアレックス、と簡単に自己紹介を済ませると『ネストル』は自分の名はニーシャだと教えてくれた。
「『夜』って意味があるんだけど、今の仕事を踏まえると実にアタシに合った名前よね」
 あっけらかんと言う彼女に、やっぱりネストルなんだと再確認できたエイレ。
「しかし何でストリッパーなんかに――」
「アレクサンダー?」ぴしゃりと言い放つニーシャ「人の生き方と仕事をとやかく言えないでしょ?」
 うぐ、と言葉を失うアレックス。



 どうやら、男であっても女であっても、この軍師は隊長以外の人には厳しいようである。




↓あとがき
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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