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『スタジオ える あっと ブログ』 略して 『鼻眼鏡』!(ええええ?)
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第六話 『軍師ネストル』
「この前の出来事で、陛下が姫様の親衛隊を作るそうだ」
 『赤獅子』と呼ばれるようになったリアンダーに、ネストルは報告した。そして返事を待つよりも早く、彼を隊長に任命するよう国王に勧めたとも言った。
「隊長?オレが?」
「『赤獅子』リアンダーと呼ばれる男は1人しか知らないが、もっといるのか?」
 そうからかうとリアンダーはそうじゃない、と反論した。
「オレは常に前線で戦ってきた男だぜ?人をまとめる事なんてした事無いのに、いきなり隊長の座なんて――」
「隊長の素質なんか後から付いてくる」と無責任に断言するネストル。「一番大切なのは姫様がお前に心を開いている事だ」
 これには閉口しているとネストルは続けた。
「この国の王は今ではただのお飾りでしかない。私の意見で簡単に考えを変えるようではこの国の行く末は決まったも当然だ」
 それはネストルが国王の忠告者だからじゃないのか、とリアンダーは密かに思った。
 ネストルは若い頃に大陸中を歩き回った旅人で、彼の訪れていない国は無いと言われている(彼自身はこれに関して肯定も否定もしていない)。いろんな国やその政治を見てきたネストルはいつしか賢者と呼ばれ、この国に腰を据えてからは軍師とも呼ばれるようになった。
「しかし、あの姫様は違う」リアンダーの意識を引き戻すように言うネストル。
「彼女は他にはない力を持っている。この国を変えられる事の出来る力だ。そしてこの前の出来事でそれが暴走した時、誰が彼女を静めることが出来た。お前だろ、リアンダー?
 私は覚えているぞ、誰も近づけなかった彼女に必死に名前を呼び続けたお前の姿を……」
 その時の事は、実はあまりよく覚えていないリアンダーである。必死に姫の名を呼びかけ、彼女の目に正気を持たせる事しか頭に無かった。何を言ったのかも、どんな事をしたのかも良く覚えてはいないが、暴走が収まった瞬間その場に崩れ落ちた事は恥ずかしくも記憶に残っている。
 そして同時に、彼女が暴走したきっかけも思い出し、腹が煮え繰り返るのを感じた。
「だからこそお前が適任者なんだ……それに、姫様を城から遠ざけるのには持って来いの提案だろ?」
 ニヤリと彼が笑うと、やっとネストルの意図がつかめた。
 リアンダーもネストルも王家にはうんざりしていたが、姫は気にかけている。彼女を他国から守るといって身を隠せば自分達も姫も王家から遠のける事が出来、一石二鳥だ。
「相変わらず悪知恵が働くな」
 苦笑するリアンダーにネストルは誇らしそうだ。

「この地位までのし上がるには、当然だろ?」










 アメリカ、ロサンゼルスに着てから3週間、朝ごはんはエイレの仕事となっていた。特に決めてそうしたわけではなかったがスタントマンの仕事に出るアレックスは朝が早く、朝食は外で済ましているらしい。それ自体には特に問題は無いが、一緒に住み始めてわかった事と言えば彼は見た目よりも大食いである事。一日の運動量を考えればむしろたくさん食べとかないと燃料切れしてしまう気がする程だ。
 そこである日、朝食を作ってみたところアレックスは飢えた犬の様に全てを平らげたのである。しかも夜帰って来たらいつもより心なし元気そうだったので、エイレは自ら進んで朝ごはんを作るようになった。
 そうしてアレックスの好みも少しずつ分かってきた。
 コーヒーは濃い目のブラック、味付けは濃い方を好み、肉料理が大好きで野菜は出されない限りすすんで食べようとはしない。
 母が無くなってから他の人に料理を振舞う事が無かったエイレは、たったこれだけの事に喜びを見出していた。

 だからと言って、彼女は一日中何もしていない訳ではない。
 他の隊員と姫の4人を探す為にあちこち探し回っているが、やはりと言うべきか手がかりがまったく集まらない。アレックスの『第六感センサー』に頼り切ってしまいたくは無いが、どうもソレが無いと手も足も出ないみたいだ。


「ネストルを見つけた」
 仕事がひと段落終え、休日の1日目の朝アレックスは唐突に言った。思わずコーヒーを注ぐエイレの手が止まり、驚いた表情で本当に?と聞き返した。そして彼が頷くと、エイレは軍師であり友人であったネストルを思い出していた。
 肩まで伸びたストレートの髪と口髭、意志の強そうな眉毛と有無を言わせない目。身長こそリアンダーより低かったが、その存在感は圧倒だった。彼が言えば、黒いものも白になるほどだ。
 しかし、そんな彼はリアンダーとうまがあった。年齢的には自分の息子であってもおかしくないのに、リアンダーとネストルは何でも話し合える中だった。
「彼がいれば私たちも本格的に行動できるようになるわね……あ、もしかして『彼』ではなく『彼女』だったり?」
「……彼女だ」
 彼が渋りながら言うので、エイレはその理由を聞いた。

 果たしてどう伝えるべきか、アレックスは本気で悩んだ。








 スタントの仕事もやっとクランクアップ。
 エイレが朝食を作ってくれるようになってから、アレックスは自分の体の調子の良さをしみじみと感じていた。姉が口うるさく、朝食が一日で一番大切なんだからちゃんと食べなさい、と言っていたのに信じていなかったのを心の中で謝罪した。
 隊長に朝ごはんを作ってもらうなんて恐れ多いと思った事もあったが、それ以上にエイレのご飯はおいしかった。長い間、ご飯を作ってもらう事が無かっただけにひとしお感動が大きかったのだ。
 周りも彼の調子の良さに気づき秘訣を問われた。アレックスが素直にその理由を話すと、例の彼女か、と意味ありげに言われるのを無視した。
 どうも回りはアレックスとエイレをくっつけたい様だが、自分達の関係をそんなものじゃないと言いたい半面、言っても信じてくれないだろうと分かっているので勝手に思わせる事にした。

 撮影もひと段落終えたので、ここはひとつぱぁっとやろうと言う事になった。今日が最終日だとエイレには事前に言ってあったのをアレックスは良かったと思った。ここで彼女に電話をして、今日は遅くなる、なんて言うものなら周りがさらにうるさくなるだけ。それに、こういう時に行く場所は決まっていた。だが、それを電話越しでエイレに報告するのは戸惑われる。
「良い所見つけたんだが、そこに行ってみないか?」
まさか、このスタッフの提案でネストルが見つかるなんて思ってもいなかった。


 露骨なネオンの看板の下に立つ2人のバウンサーはどこでも同じ、特に変わった感じがしないなと思ったアレックス。
 しかし、なぜか落ち着かない。
 横でここを紹介したスタッフが、いい女の子がいてさぁ~、と言うのを聞き流しながら店内を見渡していたら…


 いた。




↓あとがき
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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